小さな「あいさつ」は、言わせるほど遠のく日があります。
司書として図書館に立っていると、「ほら、あいさつは?」「借りるときはなんて言うんだっけ?」と、子どもの横で言葉を急かす場面に出会うことがあります。
その気持ちも、焦りも、とてもよく分かります。
けれど、声をかけられた子どもが一瞬固まってしまう姿を見るたびに、「ああ、今は言葉が出る前の時間なんだな」と感じることも少なくありません。
今回は、1歳〜6歳を中心に、朝・外・家・園の場面別で選べる「あいさつ絵本」をまとめました。
司書として選んだ視点と、日々の子育てで感じてきた手触りを重ねながら、言葉が出る“きっかけ”が増える流れに寄せています。
はじめに|おすすめ3冊(早見)
まずは、いまの気持ちに近い3冊からどうぞ。
各タイトルから本文の紹介パートへジャンプできます。
「おはよう」が出にくい朝の絵本|スタートの一言が軽くなる
朝は時間も気持ちも、いちばん詰まりやすいところ。
「言ってごらん」と促すほど固まる日もあるので、まずは絵本で口のほうを先にほぐしていきましょう。
『おはようどり』|声を出そうとしなくても、朝が始まる流れが見える
『おはようどり』は、いちばんどりの「おはよう!」が、眠っている鳥たちへ、さらに街の人へと伝わっていく物語です。
反復する呼びかけとリズムが心地よく、聞いているだけでも参加できる構造。
まだ声が出にくい子でも「朝の始まり」を体で受け取りやすく、登園前の切り替えを軽く支えてくれます。
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あいさつを急がせない朝に。
鳥たちの「おはよう」が広がるのを追ううち、声にしなくても朝の輪に入れる感覚が残ります。
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目が覚めてから動けるまでの「間」をつないでくれる
『ぱっちり おはよう』は、眠っている動物たちがページをめくる動きと一緒に「おめめ ぱっちり おはよう」と起きていく絵本です。
起きることを説明したり促したりせず、視線の変化とくり返しの言葉で“朝になる感じ”を先に届けます。
声かけが届きにくい起き抜けの「間」に置くと、まず目と気持ちがそろいやすくなります。
目が覚めても体が動かない朝に。
ページをめくるたび「ぱっちり」と目が開き、起きる入口だけを軽やかに渡してくれます。
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まねるだけで参加できて、朝の往復が成立する
『おはよう(あいさつしかけえほん)』は、ページが上下に分かれたしかけで、めくる動きそのものが会話の合図になります。
「おはよう/こんにちは/こんばんは」と1日のあいさつを、練習ではなく遊びの往復として重ねられる構成。
言葉が出にくい朝は“めくる係”だけでも参加でき、空気が荒れにくい一冊です。
声が小さくてもOK。
上下のページをめくって“まねるだけ”で「おはよう」が返せて、朝のやりとりが自然に成立します。
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外で黙ってしまう子の絵本|「こんにちは」の前に入口を作る
外では声が出ないのに、家ではよく話す。そんな場面は珍しくありません。
ここでは「言う」ことを目標にせず、目が合う・まねできる・気持ちが動くところから、外の入口を広げていきます。
📘 言葉が出ない瞬間の受け止め方は、気持ちを言葉にする絵本にもまとめています。
『めとめをあわせてこんにちは』|声より先に、目が合う安心が生まれる
『めとめをあわせてこんにちは』は、あおむしくんが動物たちの顔(目)まで一生懸命たどりつき、目を合わせて「こんにちは!」とあいさつしていくお話です。
読み進める途中にクイズのヒントが入り、相手を想像する時間が自然に生まれます。
声の大きさや上手さではなく、「相手を見る→届く」という順番が物語の中にあるので、あいさつが苦手な子にも“できた感”が残りやすい構成。
園や教室で友だちと会う前に、関係の入口をやさしく整えたいときに合います。
声が出ない日でも、目と目が合えば「こんにちは」は始まる。
友だちと同じ場にいる安心を、物語の体験として渡せる絵本です。
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『まねっこおかお(NEWぴよちゃんとあそぼ!)』|顔のまねから、やり取りが始まる
『まねっこおかお』は、タブを動かすと表情が変わる「うごくしかけえほん」。
にっこり・びっくり・べーっなど、まねが先に立ち上がる作りなので、あいさつの前に“やり取りが成立した”感覚を作りやすい。
声量や言い方を求めず、目と顔で関係の入口ができる一冊です。
声が出ない日も、顔のまねだけで「いま反応できた」が残ります。
友だちとの距離を、ことばより先に縮めたい朝に。
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『なんだっけ……?』|言いたいのに出ない瞬間を、そのまま受け止める
『なんだっけ……?』は、朝起きて「言うはずだった言葉」を忘れたねこさんが、みんなに尋ねて回る物語です。
会話のやり取りを追ううち、あいさつの大切さだけでなく、言葉をかけ合える関係のあたたかさが立ち上がります。
声が出ない朝の“間”に置くと、促しより先に空気が整いやすくなります。
朝のあいさつを忘れたねこさんが、友だちに聞きながら言葉の居場所を探すお話。
言えない日にも「声をかけてくれる人がいる」安心が残ります。
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おうちの中のあいさつ絵本|暮らしの区切りに、言葉がそっと乗る
家の中には、声を出さなくても気持ちが切り替わる瞬間がたくさんあります。
ここでは「言わせる」よりも、区切りが見えることで言葉が添いやすくなる流れを大切にします。
『いただきます ごちそうさま』|食事の始まりと終わりが、自然につながる
『いただきます ごちそうさま』は動物たちが食べる前と後の姿を並べて見せ、あいさつの往復を“変化”として体感させます。
切り絵の形がはっきりしていて、声が小さい日も指さしだけで参加しやすい構成。
食卓の始まりと終わりが短くまとまり、朝夕のルーティンに置きやすい一冊です。
食べる前と食べた後を見比べるだけで、「いただきます/ごちそうさま」が自然に口にのってくる赤ちゃん絵本です。
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『めくるしかけえほん ただいま、おうち!』|帰ってきた安心が、言葉の前に広がる
『めくるしかけえほん ただいま、おうち!』は、いろんな動物たちの「ただいま」と、それぞれの家の「おかえり」を見比べられるしかけ絵本です。
片観音ページをひらくと迎え方の景色がぱっと広がり、言葉より先に“帰宅の合図”が立ち上がります。
無理に言わせず、めくる役だけでもやりとりが成立しやすい構造。玄関の空気をやわらげたい日に、短く効きます。
玄関で言葉が出ない日にも。
片観音をひらくたび「おかえり」が広がり、帰ってきた安心が先に整っていきます。
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『おやすみなさい(あいさつしかけえほん)』|一日の終わりを、静かに閉じる
『おやすみなさい(あいさつしかけえほん)』は、くま・うさぎ・ねこ・ぶたなどに、読者が“おふとんをかけてあげる”しかけ絵本。
上下に分かれたページをめくると、遊んでいた動物にふとんが重なり、目を閉じて「おやすみなさい」へ着地します。
促しや練習の言葉になりにくく、動き→安心→あいさつの順で流れが作れる点が寝る前向き。
眠いのに遊びたい夜でも、動物たちにおふとんを「かけてあげる」だけで終わりへ進めます。
言葉が出ない日は“めくる係”でも成立し、寝室の空気が整いやすい一冊です。
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『あいさつって たのしい』|家の中のあいさつをまとめて眺め、言葉の引き出しを増やす
『あいさつって たのしい』は、「おはよう」「いただきます」「ありがとう」などのあいさつを口にすると、動物に変身して仲間が増えていく構成です。
あいさつを“練習”にせず、言葉が弾む感覚そのものを遊びとして味わえます。
区切って読むリズムが作りやすく、声が小さい日でもテンポだけで往復が成立しやすい一冊です。
「おはよう」から「おやすみなさい」まで。
言えた/言えないで測らず、口にした瞬間が“ともだちの入口”になる絵本です。
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園のあいさつが気になるときの絵本|先生や友だちの輪に入る前に
園では「こんにちは」と言う前に、空気にのまれて声が出なくなる日があります。
この章では、あいさつをがんばらせるのではなく、園に入る前の“入口”をやさしく作ってくれる2冊を選びました。
📘 園での「最初のひと言」に迷うときは、入園前におすすめの絵本にも似たヒントがあります。
『ここは、ようかいチビッコえん:ヒュードロ・タウンのようかいたち』|園の空気が明るく見えて、「入る」が少し軽くなる
『ここは、ようかいチビッコえん:ヒュードロ・タウンのようかいたち』は、ヒュードロ・タウンの園に通う妖怪の子どもたちの一日を追う物語。
朝の「ようかいたいそう」から遊び、散歩、商店街でのあいさつ、給食へと場面がつながり、園の空気が具体で想像しやすい構成です。
友だちと同じ場にいる安心が先に立ち、入口の重さを軽くしてくれます。
園の一日が“友だちと一緒の流れ”で見えてくる絵本。
朝の体操、散歩、あいさつ、給食まで「入ってみたら案外だいじょうぶ」が残り、登園前の身構えが少しゆるみます。
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『せんせい みてて!』|先生との接点が増えて、園での“最初のひと声”が出やすくなる
『せんせい みてて!』は、保育園の子どもたちが遊びの中で「見てて」と先生に声をかけ、見守られたり拍手されたりする流れを描きます。
ポイントは、励ましや指示より先に「見てもらえた」体験が積み重なるところ。
あいさつそのものが難しい日でも、先生との接点が先にできると、園での“最初のひと声”が出やすくなります。
園で「先生に気づいてほしい」気持ちがふっと出た日に。
『せんせい みてて!』のくり返しが、最初の声かけを短くしてくれます。
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5歳〜6歳の“ひとこと”を育てる絵本|「ありがとう」「ごめんなさい」の入口
5歳〜6歳になると、あいさつの種類が少し増え、「ありがとう」「ごめんなさい」といった言葉が意識に上り始めます。
一方で、気持ちが追いつかず、分かっているのに言えない場面も増える時期です。
この章では、正しさを教えるのではなく、気持ちが動いたあとに言葉がついてくる流れを大切にした2冊を選びました。
『せかいの「ありがとう」』|場面ごとに感謝が広がり、言葉が自分のものになる
『せかいの「ありがとう」』は、ドイツ・中国・フィリピン・ハンガリー・ブラジル・モーリタニアの子どもたちの暮らしやお祭りをたどりながら、各国の言葉で「ありがとう」に出会う構成です。
助けてもらった瞬間や家族・友だちへの気持ちが先に見えるため、「言いなさい」の前に理由が残ります。
巻末の国情報や「どういたしまして」「ごめんね」も日常へ持ち帰りやすいポイントです。
「ありがとう」を言う理由が、暮らしの場面で腑に落ちる絵本。
世界の子どもたちの毎日をのぞきながら、言葉が“使いたくなる”感覚へ近づきます。
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『ごめんね でてこい』|言えない時間も含めて描き、気持ちが整うのを待つ
『ごめんね でてこい』は、大好きなおばあちゃんとしばらく一緒に暮らすことになったはなちゃんが、生活の変化でもやもやを溜め、「おばあちゃんなんて、きらい!」と言ってしまうところから始まります。
すぐに謝れない悔しさや戸惑いが丁寧に描かれ、気持ちが整うまで待つ視点が自然に残ります。
謝罪を“正解行動”にせず、落ち着いたあとに言葉が出る流れを支える物語です。
謝りたいのに言葉が出ない日へ。
『ごめんね でてこい』は「言えない時間」ごと抱えて進み、最後の一言が自分の選択として残ります。
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よくあるQ&A|あいさつが出ないとき、どう声をかける?

子どものあいさつが出ない場面に立ち会うと、どう声をかけるのが正解なのか迷います。
母として日々を過ごす中で感じたことは、言葉が出ない時間にも、ちゃんと理由があるということ。
ここでは、よくある迷いをいくつか取り上げ、気持ちが少し軽くなる考え方をまとめました。
Q1 子どもが言わないとき、代わりに親があいさつしてもいい?
はい、問題ないと思います。
親が自然にあいさつする姿を見ることで、「こういう場面で言うんだ」という見通しが残ります。
子どもが言わなくても、お相手との関係はちゃんとつながっていますよ。
Q2 促すと嫌がります。どう始める?
言葉そのものを求めるより、先に気持ちが動く場面を増やしてみては。
目が合う、うなずく、手を振るなど、声が出なくても成立するやり取りからで十分です。
図書館で「ほらなんていうの?」と保護者さんから促されて、でも言えない……という様子のお子さんには、「心の声は聞こえたよ」と伝えるようにしています。
Q3 外だけ黙るのはなぜ?
外は人も音も多く、子どもにとって情報量が多い場所です。
家では言えていても、外では言葉が後回しになることはよくあります。
無理に同じ反応を求めず、外では「慣れる時間」が必要だと考えてみると、気持ちに余裕ができるかもしれません。
まとめ
あいさつは、言葉だけで作るものではありません。
朝・外・家・園で「言いやすい場面」をひとつ増やすだけで、自然に出る日が増えていきます。
今日から完璧を目指さなくて大丈夫です。
一回でも「言えた」「目が合った」「手が振れた」が増えたら、それでOK。
ますはそこから始めてみてください。
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