3歳は「やってみたい」気持ちがぐんと育つ時期です。失敗や成功をくり返しながら、少しずつ自己肯定感の土台が形づくられていきます。
絵本は、そんな成長のそばで安心を届ける存在。司書の視点から見ると、この時期の読書体験は「最後まで聞けた」「言葉をまねできた」といった達成感を積み重ねる時間でもあります。
今回は、3歳の子どもが自信と安心を感じられる、自己肯定感を育む絵本18冊を紹介します。
3歳|“やってみたい”“できた”を見つめる絵本
3歳前後の子どもは、毎日が挑戦の連続です。服を着る、靴をはく、牛乳を注ぐ。小さな「できた!」を積み重ねるたびに、自信という芽が育っていきます。
そんな瞬間を温かく描く絵本は、家庭での「見守る力」をそっと支えてくれます。
子どもの「やってみたい」を応援する絵本
- 『はじめてのおつかい』 作:筒井頼子 絵:林明子|出版社:福音館書店
母の頼みを胸に、初めて一人で買い物に出かける女の子のお話です。緊張や失敗を経て見せる笑顔が心に残ります。繰り返しの語りが心地よく、親子で「できたね」と共感できる一冊。
- 『ようちえんにいくんだもん』 作:角野栄子 絵:佐古百美|出版社:文化出版局
3歳になったマリちゃんが、母と一緒に幼稚園の見学へ出かけたり、通園路を歩いたりして、自分が通う幼稚園を決めるまでの過程を描いた物語です。幼稚園に通うことを楽しみに思えるようになる、やさしく背中を押す一冊。
- いろいろおてつだい 作:えがしらみちこ|出版社:小学館
はなちゃんが、食事のしたくをお手伝いしようと思い立ちます。「おてつだい おてつだい なにしよう?」と問いかけながら、食器を運んだりテーブルを拭いたり、できることを少しずつ増やしていく構成です。あてっこ形式で読み進められ、子どもの「やってみたい」を自然に育む絵本。
失敗しても大丈夫!ポジティブシンキングを伝えられる絵本
- 『ぐるんぱのようちえん』 作:西内ミナミ 絵:堀内誠一|出版社:福音館書店
ひとりぼっちのぞう・ぐるんぱが、いろいろな仕事に挑戦しては失敗をくり返します。けれど最後には、自分の得意なことを生かして幼稚園を開き、たくさんの子どもたちと笑顔に包まれるように。うまくいかない経験も自分をつくる大切な一歩だと気づかせてくれる物語です。
- 『ぼちぼちいこか』 作:マイク・セイラー 絵:ロバート・グロスマン 訳:いまえよしとも|出版社:偕成社
カバくんはいろんな仕事に挑戦しますが、どれもうまくいきません。それでも落ち込まず「ぼちぼちいこか」と前を向く姿が印象的。関西弁の語り口とユーモラスな展開で、失敗しても自分を責めずに笑っていられる大らかさを伝えます。読み聞かせにもぴったりの一冊です。
- 『ま、いっか!』 作:サトシン 絵:ドーリー|出版社:PHP研究所
主人公の男の子が次々と失敗をしながらも、「ま、いっか!」と気持ちを切り替えていくお話です。思いどおりにならない日も、前向きに過ごす力があることをやさしく教えてくれます。明るくてテンポのよい語りで、読後にふっと肩の力が抜ける絵本です。
3歳|やさしいことばで心を包む絵本
3歳の子どもにとって、「好き」「たいせつ」という言葉は、心の基礎をつくる栄養のようなものです。やさしい語りの絵本は、読む側の声にも温度を与えてくれます。
やさしく語りかける愛情絵本
- 『だいすき ぎゅっ ぎゅっ』 文:フィリス・ゲイシャイト/ミム・グリーン 絵:デイヴィッド・ウォーカー 訳:福本友美子|出版社:岩崎書店
「ぎゅっ」という音のくり返しが、まるでおまじないのように子どもの心を包み込みます。うれしいときも、泣きたくなるときも、抱きしめられることで安心を取り戻す。そんな親子の温かなつながりを描いた絵本です。1日の終わりに読むと、穏やかなやすらぎが広がります。
- 『きみのことが だいすき』 作・絵:いぬいさえこ|出版社:パイ インターナショナル
「きみがいてくれてうれしい」という思いを、やわらかなことばで綴った一冊です。何気ない日常のなかで、親が子を想う気持ちが静かに伝わります。声に出して読むたびに、親子の心が近づき、安心の輪が広がるような絵本です。
- 『きみはたいせつ』 作・絵:クリスチャン・ロビンソン 訳:横山和江|出版社:BL出版
見た目も考え方も違う子どもたちが登場し、「誰もがかけがえのない存在」であることを語りかけます。明るい色彩とシンプルな言葉で、多様性や個性の美しさを自然に伝える作品です。子どもが自分をまるごと受け入れたくなる、やさしい肯定の絵本です。
言葉にできない想いを映すストーリー絵本
- 『しげちゃん』 作:室井滋 絵:長谷川義史|出版社:金の星社
「どうしてこんな名前なの?」と悩む少女・しげちゃん。恥ずかしくて嫌いだった自分の名前に、家族の愛情や願いが込められていたことを知ります。名前の大切さと、愛されて生まれてきたことを実感できる絵本です。読後にあたたかな余韻が残ります。
『わたしとなかよし』 作・絵:ナンシー・カールソン 訳:なかがわちひろ|出版社:瑞雲舎
「できるときも、できないときも、そんな自分が好き」と語りかける主人公。完璧じゃなくてもいいという優しさが、ページをめくるたびに伝わります。子どもが自分をまるごと受け入れる勇気をもらえる、心の応援絵本です。
- 『あなたが だいすき』 作:鈴木まもる|出版社:ポプラ社
「すき」という気持ちをまっすぐに伝える、あたたかな愛情絵本です。親子や動物たちの優しいふれあいを通して、言葉にできない想いがじんわりと伝わります。読んだあとに「だいすき」と言いたくなる一冊です。
3歳|笑って心が軽くなるユーモア絵本
ときには笑いが落ち込んだ気持ちをほぐしてくれます。ユーモアのある絵本は、「失敗してもいい」「違っていていい」という空気を、自然に伝えてくれます。
笑いながら気持ちを整理できる絵本
- 『ムカムカ ドッカーン!』 作:ミレイユ・ダランセ 訳:ふしみみさを|出版社:パイ インターナショナル
怒りが爆発してしまう小さな子の気持ちを、ユーモラスに描いた絵本です。ムカムカがドッカーン!と出たあと、すっと落ち着いていく過程がリアルで愛らしい。怒ってもいい、自分の感情を大切にしていいというメッセージが伝わります。親子で笑いながら気持ちを整えられる一冊です。
- 『それしか ないわけ ないでしょう』 作:ヨシタケシンスケ|出版社:白泉社
「ほかの道もあるよ」と語りかける、やわらかなユーモア絵本です。失敗したり行き詰まったりしても、別の視点を見つけることで心が軽くなる。ヨシタケシンスケさんらしい発想とテンポのよい語りで、悩みを笑いに変える力をくれます。
- 『パンどろぼう』 作・絵:柴田ケイコ|出版社:KADOKAWA
パンが大好きな“パンどろぼう”が巻き起こすドタバタ劇。ユーモアあふれる展開の中に、「好き」という気持ちを貫く力強さが光ります。笑ってスッキリ、最後に心がほっこりする人気シリーズの第一作です。
ちょっとドジな主人公が愛おしい絵本
- 『へんしんトンネル』 作・絵:あきやまただし|出版社:金の星社
トンネルをくぐると、ことばが変身!「かっぱ→ぱかっ」など、声に出して読むと笑いがこみ上げる名作です。テンポのよい展開に子どもたちは夢中になり、言葉のリズムや音の面白さを体で感じられます。親子で一緒に声を出して楽しめる、人気のことばあそび絵本です。
- 『ねずみくんのチョッキ』 作:なかえよしを 絵:上野紀子|出版社:ポプラ社
ねずみくんのチョッキを「ちょっと着てみたい」と動物たちが次々にやってきます。小さな誤解が重なりながらも、最後は笑顔でおさまるユーモアの効いた物語です。短い繰り返しのリズムが心地よく、3歳児でも飽きずに楽しめます。
- 『おまえ うまそうだな』 作・絵:宮西達也|出版社:ポプラ社
ティラノサウルスと赤ちゃんアンキロサウルスの出会いを描いた感動作です。強い者が小さな命を守ろうとする姿に、やさしさや思いやりの芽が育ちます。シンプルな言葉のなかに深い愛情が込められた、読み聞かせでも人気の一冊です。
3歳の自己肯定感を育む絵本まとめ

紹介した絵本は、どれも「自分っていいな」と感じられる物語ばかりです。
ページをめくる時間が、日々の小さな「できた!」を見つける瞬間になりますように。
図書館でも書店でも、どうぞお気に入りの一冊を探してみてください。
🕊️あとがき
3歳の自己肯定感は、できた瞬間の喜びや、自分の受けとめてもらう安心のなかで育ちます。絵本は、ときにやさしく、ときにユーモアを交えながら、その気持ちに寄り添う存在です。読むたびに、心の中にあたたかな光がともっていきます。
「園生活がテーマの本」「自分の気持ちを伝える本」などお子さまの状況に合わせて絵本を選んであげるのも◎。絵本を通じてすてきな時間を過ごしてくださいね。