児童書専門の司書が選ぶ「子どもの怒りを見つめる」絵本|感情を言葉に変えるきっかけ作り

泣いているオレンジの服を着た女の子

子どもが怒るのは、決して特別なことではありません。
怒りの感情には、「自分の思いを伝えたい」「わかってほしい」という小さな願いが込められています

けれど、どう表せばいいのかわからず、泣いたり、黙り込んだりしてしまうこともあります。
そんなとき、絵本は心の奥にある気持ちを見つける手助けになります。

図書館の現場でも、「怒りや気持ちのコントロールに関する絵本を教えてほしい」という問い合わせがとても多くあります。
感情に寄り添う絵本を求める声が年々増えているのを実感しています。

児童書専門の司書として、今回は「怒り」という感情をテーマに3冊を選びました
ユーモアで気持ちをほぐす絵本、行動のルールを教えてくれる絵本、感情を客観的に見つめる絵本。
どの作品も、親子で気持ちを言葉にする時間をつくってくれます。

目次

子どもの怒りを見つめて思うこと——感情と向き合う絵本が増えている背景

「怒り」は、成長の途中でだれもが通る感情です。
けれど、その扱い方に正解があるわけではなく、親子の数だけ向き合い方があります。

図書館で子どもたちを見ていると、怒りは単なる反抗ではなく、
「自分の思いを形にしたい」という心の動きから生まれているように感じます。
その繊細な瞬間を受け止めるために、絵本は静かな力を発揮します。

怒りの感情は“生きる力”の一部

子どもが怒るとき、その姿に戸惑う大人は少なくありません。
大きな声を出したり、泣いたり、物に当たったり。
けれど、その奥には「わかってほしい」「思いが届かない」という気持ちが隠れていることが多いように感じます。

図書館でも、「帰りたくない」と言って泣いたり、「あの本がなかった」と悔しそうに怒ったりするお子さんを見かけます。
司書としては、それだけ絵本に心を動かされていることがうれしいのですが、
保護者の戸惑いも伝わってきます。

怒りの感情は、すべてが悪いものとは言いきれません。
自分の思いを伝えたい、心のバランスを取り戻したいというサインである場合もあります。

子どもは怒る経験を通して、「自分はどう感じたのか」「どこまでがいやなのか」を少しずつ学んでいるように思います。

抑えるより、理解することが大切

気持ちの整理がつかないまま怒りが強く表れてしまうと、
子ども自身もどうしていいかわからず、苦しくなることがあります。
そんなときに必要なのは、ただ「静かにさせる」ことではなく、
「何がつらかったのか」「どんな気持ちだったのか」を一緒にたどる時間かもしれません。

図書館の現場でも、感情の扱い方に関する絵本を探す保護者の方をたびたび見かけます。
「子どもの怒りにどう寄り添えばよいか」と相談を受けることも増えてきました
怒りを抑え込むより、その背景にある気持ちを理解する姿勢が、
少しずつ広がっているように感じます。

絵本は、感情をやさしく映し出すものです
言葉にならない思いを受け止め、心の整理を手助けしてくれます。
そんな絵本の力が、いま改めて見直されているように思います。

「子どもの気持ちを支える土台については、【自己肯定感を高める絵本】の記事でもくわしく紹介しています。」

ユーモアで気持ちをほぐす|『ころべばいいのに』

『ころべばいいのに』は、子どもの中に生まれる“むかむか”をユーモアで描いた絵本です。

怒った気持ちは、言葉にならない寂しさや悔しさの裏返しであることもあります。
笑いながら読み進めるうちに、怒りの中に隠れた“本当の気持ち”に気づける物語です。

読み聞かせのときの“声の出し方”や“集中をつくるコツ”は、こちらで詳しく紹介しています。
【絵本の読み聞かせのコツ|児童書専門の司書が伝える】

怒りの中にある“本当の気持ち”を見つめる

『ころべばいいのに』は、女の子の心に生まれた“むかむか”を、どこかおかしく、どこか切なく描いた絵本です。

いやなことをされたとき、思わず口の中でつぶやく——「ころべばいいのに」。
その強いひとことの裏には、「どうして」「わかってほしかった」という寂しさや悔しさが隠れています。

空想をめぐらせるうちに、女の子の気持ちは少しずつ変わっていきます。
怒りだけではなく、その奥にある“ほんとうの気持ち”が見えてくるようです。

「怒ってもいい」「でもその気持ちの奥にはいろんな思いがある」
読み終えたあと、ふっと肩の力が抜けるような感覚が残ります。
誰の心にもある小さな怒りを、やさしく笑いに変えてくれる一冊です。


ユーモアが共感を生む理由

ヨシタケシンスケさんの絵本に通じる魅力は、感情の奥を笑いに変える視点にあります。
『ころべばいいのに』でも、女の子の怒りが少しずつほぐれていく過程に、くすっと笑える場面がたくさん散りばめられています。

ユーモアには、心に小さな余白をつくる力があります。
笑うことで気持ちをいったん外に出せると、怒りのかたまりが少しずつほぐれていきます

その中で、子どもは自分の感情を静かに整理していくのかもしれません。

家庭で読むときは、絵やセリフを声に出して楽しむのがおすすめです。
大人が少し大げさに読んだり、子どもの表情を見ながら一緒に笑ったりすると、
怒りを笑いに変えるリズムが自然に伝わっていきます。

ユーモアがあることで、怒りを否定せずに受け止められる。
『ころべばいいのに』は、読む人の感情もおおらかに受け止めてくれます。

※本ページにはアフィリエイト広告が含まれます。

『ころべばいいのに』
作:ヨシタケシンスケ/ブロンズ新社

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

「どうすればいいか」を教えてくれる|『かいじゅうポポリは こうやって いかりをのりきった』

『かいじゅうポポリは こうやって いかりをのりきった』は、「かいじゅうとドクターと取り組む」シリーズの第2作目です。

子どもの感情と行動の橋渡しをテーマにし、怒りを抑え込むのではなく、爆発させずに扱うコツを物語で伝えています。

怒るのは自然。でも“どうするか”が大事

主人公のポポリは、すぐに怒ってしまうかいじゅう。
友だちとけんかをして落ち込んでいるところへ、“怒りのマスター”かいじゅうプワイズが現れ、気持ちとの付き合い方を一つずつ教えてくれます。

物語は、ポポリの心の中をたどるように進みます。
「深呼吸をしてみよう」「ちょっとその場を離れてみよう」など、怒りの勢いを受け止めながら行動を変えるヒントが自然に描かれています。

全体のテンポがよく、読み聞かせにも取り入れやすい一冊です。

怒りを悪いものとして否定せず、「どう扱えばいいか」をやさしく教えてくれる点が印象的です
ページをめくるごとに、ポポリの表情が少しずつ穏やかになっていくのを見ていると、子ども自身も安心して気持ちを整理できそうです。

対話から学べる“怒りとのつき合い方”(アンガーマネージメント)のヒント

『かいじゅうポポリは こうやって いかりをのりきった』の特徴は、
怒ったときに「こうしなさい」と教えるのではなく、気持ちとの向き合い方をいっしょに考えていく流れが描かれていることにあります。

怒りのマスター・かいじゅう「プワイズ」がポポリに語りかける言葉は、命令ではなく対話の形です。
「落ち着く時間をつくろう」「気持ちを声にしてみよう」など、やさしい誘いかけとして方法が示され、やり取りを見守るうちに怒りとつきあうリズムがつかめていきます。

色や表情のコントラストが心情を支え、場面に応じたトーンの変化が感情の移ろいを伝えてくれます。
「こうしなさい」と押しつけない、けれど実践しやすいヒントが手元に残る——そのバランスがこの絵本の魅力です。

『かいじゅうポポリは こうやって いかりをのりきった』
作:新井洋行監修:岡田俊(臨床心理士・公認心理師)出版社:パイ インターナショナル

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

自分の中の“ムカムカ”を見つめる|『ムカムカ ドッカーン!』

『ムカムカ ドッカーン!』は、怒りの気持ちが体の外に飛び出してしまう様子を、力強い絵で描いたフランスの絵本です。
赤くうねる“ムカムカ”が、心の中の怒りをそのまま形に変えて見せてくれます。

怒りを“色と形”で感じる体験

『ムカムカ ドッカーン!』では、主人公の男の子、ローベルが怒りに飲み込まれると、真っ赤な「かたまり」(=怒りの〈かたまり〉)が姿をあらわします。煙のように、火のようにふくらみ、部屋の中で大暴れ。

やがて男の子は、その「かたまり」がしぼんでいく様子を外から見つめ、ほっと息をつきます。

怒りを抑えつけるのではなく、対象として見て扱う流れが描かれてるのが特徴的です。
絵のタッチも印象的で、強い赤を基調にした力強い筆致がページごとに感情の熱を伝えます。

怒りという見えない感情が“かたち”を持つことで、子どもはその存在を安心して受け止められるのかもしれません。

海外で愛される理由と、日本での読み方のヒント

『ムカムカ ドッカーン!』は、2000年にフランスの児童書出版社 L’école des loisirs から刊行された絵本です。
主人公ロベールの中から飛び出す“怒りのかたまり”を、強い赤と暗めのトーンで表現しています。

日本版(パイ インターナショナル)では、日本アンガーマネジメント協会の推薦絵本として紹介され、代表理事・安藤俊介さんによる解説も収録されています。

海外で長く読み継がれている理由のひとつに、怒りの「前・最中・あと」を絵でたどれる構成にあるといえるでしょう。
道徳的な指導ではなく、子どもの内側に寄り添う描き方が、読み手の安心感につながっているように思います。

家庭で読むときは、“かたまり”の変化を一緒にたどるのがおすすめです。
「ロベールの“むかむか”(=怒りの〈かたまり〉)、どんな形になってる?」と声をかけてみましょう。子どもが気持ちを外からながめる練習になります。

読むたびに、怒りのかたちが少しずつ変わって見える——。
その体験そのものが、気持ちを整える第一歩になるように感じます。

『ムカムカ ドッカーン!』
作:ミレイユ・ダランセ/訳:ふしみみさを/解説:安藤俊介/パイ インターナショナル

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

白い机に絵本が4冊絵本が積んである写真

絵本を読み終えたあとにかけたい、心を見つめる3つの質問

絵本を閉じたあとこそ、子どもの心がいちばんやわらかくなる時間です。
「どう感じた?」という一言が、感情を整理するきっかけになります。

ここでは、読み終えたあとに親子で交わしたい3つの質問を紹介します。
どれも“正しい答え”を求めるものではなく、気持ちを言葉にする練習として活かせる問いです。

「どんなときに“むかむか”した?」——感情を思い出させる問い

絵本の中の“むかむか”や“いかり”の場面をきっかけに、子どもが自分の体験を語りやすくする質問です。
たとえば『ころべばいいのに』なら、「あの女の子、どんなときにむかむかしてたかな?」とたずねたあと、
「ママもあるな。○○ちゃんも同じように思うことある?」と続けるだけでも十分です。

思い出した気持ちを言葉にするうちに、怒りの理由や背景が少しずつ整理されていきます。
話を聞くときは、評価や正解を探さずに「そう感じたんだね」と受け止めて。
絵本の世界が続いていくような静かな時間が、自分の気持ちを見つめるきっかけになります。

「どうしたらよかったと思う?」——行動を整理する問い

『かいじゅうポポリは こうやって いかりをのりきった』『ムカムカ ドッカーン!』などを読み終えたあと、
主人公の行動をいっしょに振り返るようにたずねる質問です。
「ポポリ(あるいはロベール)は、どうしたらよかったと思う?」と聞くと、
お子さまが物語を通して感情と行動の関係を考えるきっかけになります。

怒ること自体はいけないことではありません。
ただ、そのあとに“どう動くか”を考える視点が、次の行動を選び直す力につながっていきます

子どもが考えている間は、答えを急がず、静かに見守って。
その時間が、自分の中にある「もう一度やり直す力」を育てていきます。

「今どんな気持ち?」——感情の現在地を確かめる問い

絵本を読み終え、少し落ち着いたころにかけたい質問です。
物語の中で変化していく表情や場面を一緒に思い出すと、心の動きをやさしくたどれます。

「ロベールは最後、どんな顔をしてたかな」「ポポリはどんな気持ちになってたかな」と問いかけると、
子どもはまず登場人物の気持ちを想像します。
そのあとで、「○○ちゃんは今どんな気持ち?」と重ねると、自然に自分の心にも意識が向かっていきます。

すぐに言葉にならなくても大丈夫です。
「わからない」や「なんとなく」も、今の気持ちの大切なサイン
その小さな声に耳を傾ける時間が、感情を整理する第一歩になります。

夜の読み聞かせで気持ちを整えたいときは、寝かしつけに向く静かな雰囲気の絵本も役立ちます。くわしくは【寝かしつけにおすすめの絵本】の記事もあわせてご覧ください。

気持ちを見える形にする|絵本と一緒に使いたいサポートグッズ

絵本で気持ちを言葉にしたあとは、日常の中でも感情を“見える形”にしておくと、子どもが安心して表現できるようになります。

ここでは、怒りだけでなく、うれしい・悲しい・楽しいといったさまざまな気持ちを家族で共有できるサポートグッズを紹介します。

絵本とあわせて使って、感情の変化をやさしく受け止める習慣づくりにつなげてくださいね。

感情カード——言葉にする練習に

気持ちをうまく言葉にできないとき、感情カードは小さな手助けになります。
「うれしい」「かなしい」「くやしい」「びっくり」などのカードを並べて、いまの気分を選ぶだけでも構いません。
怒り以外の感情も視覚的に示すことで、子どもは自分の心の中にいろいろな“気持ちの棚”があることを知っていきます

家庭では、朝や寝る前など、落ち着いた時間にカードをめくるのがおすすめです。
「今日はどんな気持ち?」と声をかけながら選ぶだけで、言葉にしにくい思いを自然に共有できます。

気持ちに名前をつける練習に|カードゲーム「きもちのきもち」

絵80+解説20=全100枚、12の遊び方で短時間アクティビティに最適。 トレカサイズで扱いやすく、家庭・園・学童まで場面を選びません。 遊びの流れで「感じたことを言葉にする」体験がくり返せます。 ※紙製カードのため口に入れないこと。これは診断ツールではなく、感情語の学びを支える教材です。

「気持ちに名前をつける」練習が、遊びの流れで続きますね。

🎁 Humanité|きもちのきもち(新装版)

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

聞く・話すを往復する|こころかるた〈子ども向け〉

勝ち負けより対話が主役。Q&Aカードを交代でめくり、気持ちや考えを共有できます。 読後の余韻をそのまま会話へつなげやすく、短時間アクティビティに最適。 対象は小学生目安。外寸約93×124×20mmで持ち運びも簡単。 家庭で運用しやすい設計です。 ※紙製カードのため口に入れないでください。これは診断ツールではなく、コミュニケーショングッズとしてお楽しみください。

勝ち負けより“きく・はなす”が主役。読後の余韻を対話にそっとつなげられます。

🎁 クリエーションアカデミー|こころかるた〈子ども向け〉(UNGAME)

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

マグネットボード——気持ちの“位置”を共有する

感情をマグネットやシールで表すと、言葉にするよりも簡単に気持ちを伝えられます。
たとえば「うれしい」「ちょっとイライラ」「かなしい」などのゾーンを作り、
その日の気分をマグネットで動かしていく方法です

「今日はここかな?」と指で示すだけでも、子どもの心の状態が見えてきます。
親が「ママも今日はこのへん」と自分の気持ちも置いてみると、
“伝える”より“共有する”感覚が生まれ、家庭の空気が少しやわらぎそうです。

家族の気持ちを“置ける”場所に|tower ウォールプリントボード

A4を横に2枚並べて養生テープで4象限に区切ると、気分マップが作れます。 横長58cmで視認性がよく、トレーにマーカーやマグネットの定位置も用意できます。 石こうボードピン対応で、リビングにも設置しやすい仕様。 ※取付は取扱説明書どおりに。耐荷重と落下対策を確認してください。小さなマグネットの誤飲に注意。

見た目がすっきり。置き場が決まると、気持ちの往復がほどけます。

🎁 山崎実業|tower ウォールプリントボード(トレー付き)

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

賃貸壁にも配慮|コクヨ「壁につけるマグネット」〈はじめてセットB〉

補助板バーを2段にして、上=強い/下=おだやかのスケールを作れます。 家族ごとに色マグネットを決めると、今日の気分を1秒で“置く”習慣が続きます。 専用ホッチキスで石こうボードに小さな穴で設置でき、掲示の出し入れも簡単。 ※設置は取扱説明書に従ってください。小さなマグネットの誤飲に注意。

壁そのものが“気持ちの掲示板”に。1秒で置ける仕組み、続きますね。

🎁 コクヨ|壁につけるマグネット〈はじめてセットB/補助板バー+丸マグネット〉

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

まとめ|怒りは、心の中を知る入り口

怒りの感情は、誰の中にもある自然な気持ちです。
絵本を通してその存在を見つめることで、「なぜそう感じたのか」「どうすればよかったのか」を穏やかに考えられるようになります。

子どもにとって、怒りは自分を守るサインであり、
同時に他者との関わりを学ぶための入り口でもあります。

親がその気持ちを受け止め、一緒にたどる時間を重ねることが、
感情を扱う力——心の成長——をゆっくり育てていくのかもしれません。

今回紹介した3冊は、それぞれ違う形で“怒りとつき合う”ヒントを届けてくれます。
感じ方は子どもによってさまざまですが、どの作品も、心の奥にある思いを言葉へつなぐ手助けになります。

絵本を通して見つけた感情のかけらが、
子ども自身の中で「わかってもらえた」という安心へ変わっていきますように。

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この記事を書いた人

児童書専門の司書、子どもは2人です。子どもと本をつなぐ小さな図書室のような情報サイト『Room E726.6』を運営しています。

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