完璧主義がつらい子への絵本|児童書専門の司書が選ぶ「失敗が怖い」気持ちをほどく物語

小さな椅子に座った子どもが、白い画用紙の前で鉛筆を持ち、一筆目が出せずに迷っている様子

完璧にできないと動けない、失敗が怖くて手が止まる。

そんな様子を前にすると、声をかける前にこちらが迷ってしまう日もあります。

本人はがんばっているのに、うまくいかない瞬間だけが大きく見えてしまいがち。

今回は、完璧さを正す方向へ寄せずに、気持ちがいったん落ち着きやすい絵本を紹介します

入口は「戻れる/まず一回/そのまま」の3冊です。

近い感覚の1冊から読める並びにして、必要なところだけ拾える形にしました。

後半に、親側の見方が整いやすい一般書も2冊選書しています

目次

はじめに|おすすめ3冊(早見)

いまの様子に近い気持ちから、入りやすい順に3冊を並べています。

気になるものがあれば、リンク先で内容を詳しく確認できます。

① 失敗が怖くて、崩れてしまう場面に

『しっぱいしたって いいんだよ』
失敗が「終わり」になりやすい子に、崩れたあとも戻れる道筋が残ります。
年齢目安:年長〜 この本の紹介へ→

② うまくできるまで、始められない場面に

『とりあえず やってみようよ』
完璧に整ってから動くのではなく、「まず一回」を選ぶ感覚が手元に戻ります。
年齢目安:年長〜 この本の紹介へ→

③ 比べて苦しくなり、自分が揺れる場面に

『MR.MEN LITTLE MISS その ままで いいんだよ Be Yourself』
比べて熱くなった気持ちを落ち着かせ、自分の場所へ戻る感覚が育ちます。
年齢目安:年長〜 この本の紹介へ→

完璧主義は悪者ではない|がんばりの強さが苦しさに変わるとき

完璧にやろうとする姿勢は、本来は大きな力です

最後までやり抜こうとしたり、人より丁寧に向き合えたりする土台にもなります。

ただ、その強さが「失敗してはいけない」「途中で止まれない」形に傾くと、動けなくなる場面が増えてしまうかもしれません。

できなかった瞬間だけが強く残り、気持ちを立て直す前に崩れてしまうことも。

ここから先では、完璧さを手放させるのではなく、いったん戻れる道や、最初の一歩が残る絵本を紹介します

気持ちの向きを少し緩める入口として、手に取ってみてください。

失敗が怖くて崩れる|「戻れる道」を残す絵本

失敗した瞬間に、気持ちが一気に下がってしまう。

やり直す前に「もうだめだ」と感じて、動きが止まることがあります。

ここでは、失敗をなかったことにせず、崩れたあとにも戻れる道が残る2冊を紹介します。

📘 失敗のあとに戻る感覚は、失敗から立ち直る力を育てる絵本にもつながります。

『しっぱいしたって いいんだよ』|崩れても、戻り道が先に残る

『しっぱいしたって いいんだよ』は、いとこの失敗を許せずに怒ってしまうガストンから始まる物語。

ところが自分も同じ過ちをして、しゅんと気持ちが落ちます。

パパとの会話を手がかりに、「あやまる」「ゆるす」を少しずつ選び直していくのが印象的。

失敗した側にも、見ていた側にも、戻れる道が残ります。

責める言葉が出そうなとき、いったん呼吸を置く間が作りやすくなる絵本です。

※本ページにはアフィリエイト広告が含まれます。

責める言葉が出そうなときに。
失敗した側も見ていた側も“戻る言葉”が見つかり、関係がほどけやすくなります。

『しっぱいしたって いいんだよ』
作:オーレリー・シアン・ショウ・シーヌ/訳:垣内磯子
出版社:主婦の友社
対象年齢:目安 4歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

『大ピンチずかん3』|失敗を笑って眺め、戻る余白を作る

『大ピンチずかん3』は、子どもの日常にある「大ピンチ」を集めて、大ピンチレベルの小さいものから順に紹介していきます。

大人気シリーズですが、今回は新しく「うっかりメーター」が登場し、思いがけない失敗を「自分のせい」かどうかも含めて眺め直せるつくり。

笑いながら読めるのに、読後に「次はこうしよう」が少し残ります。

「失敗=終わり」に傾きそうな空気を、先にほどいておきたい場面に。

失敗の場面を笑って眺められて、気持ちの熱がすっと下がりやすい一冊です。

大ピンチずかん3』
作:鈴木のりたけ
出版社:小学館

対象年齢:目安 5歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

うまくできるまで始められない|「小さく始める」が物語で入る絵本

始める前に頭の中で完成形が大きくなり、手が止まってしまうことがあります。

ここでは「小さく始めていい」と自然に受け取れる物語を集めました。

📘 「まず一回」を作りたい日は、自信がない子どものための絵本にも入口があります。

『とりあえず やってみようよ』|「まず一回」で止まりやすい手が動く

『とりあえず やってみようよ』は、新しいことが不安な鳥のボブが、「まず一歩」を選ぶところから始まります。

完璧に整えてから動くのではなく、やってみてから少しずつ直していく流れです。

最初の一歩が小さく描かれるので、始める前の緊張が下がりやすいのも◎。

失敗を消すのではなく、途中で戻れる道が見えてきます。

始める前に固まる日に。鳥のボブの“まず一回”が背中を押し、完璧の準備より先に手が動きやすくなります。

『とりあえず やってみようよ』
作:スジャン・リム/訳:前田まゆみ
出版社:創元社
対象年齢:目安 4歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

『バルバルさんと おさるさん(こどものとも絵本)』|丁寧にやりたい気持ちが、こわさに変わる前に

『バルバルさんと おさるさん』は、とこやのバルバルさんのところへ、おさるさんが手伝いに来るところから始まります。

熱心なおさるさんに、バルバルさんが毎日ていねいに仕事を教えていく流れ。

練習のためにバルバルさんがカットモデルになりますが、おさるさんは緊張して切りすぎてしまいます。

ところが、その髪型が街じゅうで大流行し、失敗が「終わり」にならずに転がっていく──。

丁寧にやりたい気持ちが強い子ほど、怖さへ傾く瞬間があります。

そんなときに、肩の力をいったん抜く入口になりやすい一冊です。

一生懸命な子ほど起きる「手が止まる緊張」を、物語の笑いでほどきやすくなります。

『バルバルさんと おさるさん(こどものとも絵本)』
文:乾栄里子/絵:西村敏雄
出版社:福音館書店

対象年齢:目安 5歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

『てん』|小さな印から、始めていいと伝わる

『てん』は、「描けない」と思い込んでいる子が、紙の上に点をひとつ置くところから始まります。

その点を先生が飾り、「名前を書いてみよう」と背中を押すことで、試す気持ちが少し動きます。

小さな行動が認められる流れがあるので、最初から上手にやろうとする力がゆるみやすいのもうれしい。

読み終えると、「大きく始めなくていい」が腑に落ちて、入口の重さが軽くなりそうです。

始める前に固まる日に。
点ひとつが「やってみた証」になり、完璧の準備より先に手が動きやすくなります。

『てん』
作:ピーター・レイノルズ/訳:谷川俊太郎
出版社:あすなろ書房
対象年齢:目安 3歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

比べて苦しくなる日|「そのままの自分」に戻れる絵本

周りが気になってしまい、できていないところばかりが目に入る日もあります。

ここでは、比べる気持ちを止めるより、いったん自分の場所へ戻れる物語を紹介します。

『MR.MEN LITTLE MISS その ままで いいんだよ Be Yourself』|比べて熱くなった気持ちを落ち着かせる

『MR.MEN LITTLE MISS その ままで いいんだよ Be Yourself』は、いろいろな性格や違いを、軽やかな語り口で並べていきます。

「誰かと同じでなくてもいい」と言い切るのではなく、そっと背中に手を添えるように伝わるつくり。

自分らしくいるのが難しい日もある、と言葉にしてくれるところが心に残ります。

「自分のままで立っていていい」が静かに残り、責める気持ちが落ち着きやすい。

気持ちの熱を下げたいときに、手に取りやすい一冊です。

比べて苦しくなる日に。
評価の物差しをそっと外して、「そのままでいい」へ戻しやすくなります。

『MR.MEN LITTLE MISS その ままで いいんだよ Be Yourself』
編:講談社/著:株式会社サンリオ・ロジャー・ハーグリーブス
出版社:講談社
対象年齢:目安 4歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

『ナランは ふとっちょさん』|人の目から離れ、自分の速度へ戻る

『ナランは ふとっちょさん』は、パンケーキを作ったり歌ったりするナランが、見た目をからかわれた日から動き出します。

「細くならなきゃ」と思って無理をすると、好きだったことまで遠のいてしまう流れ。

比べる気持ちを言い負かすのではなく、まず自分の感覚へ戻っていきます。

周りの評価を追いかけるほど苦しくなるときに、体の呼吸から落ち着いていける感じが残りやすい。

「自分の速度でいい」が腑に落ちて、張りつめた気持ちがほどけそうです。

比べて息が詰まる日に。
自分を変えたくなる気持ちをいったん抱え、好きだったことへ戻る手がかりが見つかります。

『ナランは ふとっちょさん』
作:バーサンスレン・ボロルマー/訳:津田紀子
出版社:工学図書
対象年齢:目安 4歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

親の視点が整う2冊(一般書)|焦りが強い日に“持ち直せる”本

子ども2人が室内のテーブルで粘土遊びをしている後ろ姿

子どもの完璧さが気になるときほど、親の側の力も入りやすくなりますね。

ここでは、関わり方を急に変えなくても、見方を少し整え直しやすい本を2冊紹介します。

『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』|不安の出どころを静かに見直す

『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』は、親の焦りや完璧さが強まりやすい背景を、ていねいにたどっていきます。

正解の育て方を並べるというより、感情の動きと向き合い直す進み方。

子どもの行動だけを直そうとしていた視線が、少しやわらぎやすくなります。

うまく関わろうとして息が浅くなる日に、呼吸を戻す場所になりやすい一冊です。

うまく関わろうとして疲れた日に。
焦りの根っこを静かにほどき、親子の距離を整え直す手がかりになります。

『子どもとの関係が変わる 自分の親に読んでほしかった本』
著:フィリッパ・ペリー/訳:高山真由美
出版社:日経BP 日本経済新聞出版
対象:保護者

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

『子どもの自己効力感を育む本』|関わり方の手札を増やす

『子どもの自己効力感を育む本』は、子どもが「やってみよう」と思える関わりを、声かけ中心に整理していきます。

正解の言い方を一つに決めるのではなく、場面別に選べる形で置かれている構成。

うまく導こうと肩に力が入る日でも、言葉を選び直す余白が残ります。

できた・できない以外の見方が増え、子どもの一歩を待つ気持ちにもつながります。

日々のやり取りを、少しずつ整え直したいときの支えになります。

焦って言葉が強くなりそうな日に。
場面別の声かけ例から選べて、親子の空気を立て直しやすくなります。

『子どもの自己効力感を育む本』
著:松村亜里
出版社:WAVE出版
対象:保護者

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

まとめ|完璧を下げるより、“戻れる回数”を増やす

完璧にできないと動けなくなる背景には、まじめさやがんばりの強さがあります。

無理に力を下げようとすると、かえって苦しさが増してしまうことも。

大切なのは、崩れたあとに「また戻れる」と感じられる経験を、少しずつ重ねていくこと。

絵本は、正しさを教える前に、気持ちの順番を整える役割を果たしてくれます。

親の側も、焦りが強くなる日はあります。

うまく言葉が出ない日があっても、それで関係が揺らぐわけではありません。

迷ったときは、いちばん近くにある一冊から。

絵本の中にある“やり直しの流れ”が、家庭の時間にも静かに戻ってきます。

📘関連ページもあわせてどうぞ。

※本ページにはアフィリエイト広告が含まれています。 紹介する商品やサービスの選定・内容は、広告掲載の有無によって影響を受けることはありません。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

児童書専門の司書、子どもは2人です。子どもと本をつなぐ小さな図書室のような情報サイト『Room E726.6』を運営しています。

目次