「読んでいるのに、うちの子が聞いていない気がする」そんな声をよく耳にします。けれど話を聞いていると、聞けないのではなく、聞きたくなるきっかけが少し足りないだけのこともあるようです。
読み聞かせの会を支える中で、子どもがふっと耳を傾ける瞬間に何度も立ち会ってきました。
この記事では、その経験から見えてきた“聞きたくなる空気づくり”や“声かけの工夫”をお伝えします。家庭でも、図書館のように静かでやさしい時間が生まれますように。
家庭でも試せる、子どもの集中を育てる「読み聞かせ前の準備」
読み聞かせの前のほんの数分で、子どもの集中の深さは大きく変わります。
読み聞かせ会の現場でも、準備の丁寧さがその後の空気を決めることを何度も感じてきました。
家庭でも、本を開く前に“聞く時間”へ気持ちを切り替えるひと工夫を加えるだけで、読み聞かせがぐっと穏やかになります。
静かな空気をつくる——「場の準備」から始める
読み聞かせの前に、まず整えたいのは「場の空気」です。
テレビの音や生活音を少し遠ざけ、照明を落とすだけでも、子どもの集中は変わります。
机の上に本を置くより、親のひざの上や床の上など、少し近い距離で座るのも効果的です。
大切なのは、「これからお話が始まるんだな」と子どもが感じられる静けさをつくること。
場所を変えるより、空気を変えるつもりで。
ほんの一呼吸分の落ち着きが、聞く姿勢のスイッチになります。
就寝前の読み聞かせに取り入れると、眠りへの切り替えがいっそうスムーズになります。
お休み前の読み聞かせについては、寝かしつけにおすすめの絵本もあわせてご覧ください。
心を聞くモードに——子どもとの“始まりの合図”を決める
読み聞かせ会では、音や歌を合図に始まることが多くあります。
小さなベルやチューブラーチャイムを一度鳴らしたり、手拍子を「トン・トトン」と合わせたり、短い歌をワンフレーズ口ずさむなど、ほんの小さな合図。
合図は五秒ほど、音量は控えめに、毎回同じ形を続けることで、子どもが自然と気持ちを切り替えやすくなるようです。
家庭でも同じように、やわらかな音やリズムを取り入れてみるとよいですよ。
テレビや家電の音を避け、子どもが一緒にまねできる手拍子や歌を使うと安心感が生まれます。
「合図→目を合わせる→一呼吸→1ページ目」の流れを一定に保つだけでも、聞く準備が整いやすくなります。
大切なのは、続けることです。
むずかしく考えず、今日からできる小さな合図をひとつ決めてみましょう。
それが、子どもと過ごす“はじまりの儀式”になります。
多くの読み聞かせ会に立ち会う中でわかった「声のトーンと間」の工夫
読み聞かせ会を見ていると、子どもの反応を見ながら、声の高さや速さ、間を少しずつ整えていく姿が印象的です。
そうした進め方が、物語を落ち着いて届けるうえで大きな助けになっていると感じます。
ここでは、現場で見えてきた「子どもの耳に届く声」の工夫を紹介します。
読み方に正解はありませんが、少し意識を向けるだけで伝わり方が変わります。
家庭で読み聞かせをするときの参考にしてみてくださいね。
声の高さと速さを「子どもの呼吸」に合わせる
読み聞かせ会では、声の高さや速さをほんの少し変えるだけで、子どもの集中が戻る瞬間があります。
特に落ち着きがないときほど、早口にならず、呼吸を合わせるように読むと安心して聞けるようです。
一定のテンポで読むよりも、子どもの様子に合わせてリズムをゆるめたり、少し低めの声にしたりすると、場の空気がやわらぎます。
ご家庭で読むときも、まず自分の呼吸を整えてから始めてみてください。
落ち着いた声は、それだけで子どもに“聞いていい時間”だと伝わります。
聞きやすい声は、上手な声よりも、安心できる声です。
沈黙も物語の一部に——“間”がつくる余韻
読み聞かせ会では、一文のあとに読み手がほんの少し間を取るだけで、子どもたちが物語の続きを想像するように静まる瞬間があります。 その沈黙は、集中が切れたのではなく、物語の中に深く入りこんでいるサインのように感じます。
“間”は意識して作るものというより、ページをめくる手を一呼吸だけ止めるような自然な動き。 そのわずかな静けさが、言葉の余韻をやさしく残します。
読む人が落ち着くと、その静けさが子どもにも伝わります。
短い「間」が生まれることで、言葉の余韻や登場人物の気持ちが、自然に心の中へ届いていきます。
ご家庭で読むときも、無理にテンポを保たず、ページをめくる前にほんの少しだけ待つ時間を作ってみると◎。
その一瞬が、子どもにとっては“想像する間”になります。
子どもが聞いていないときに試したい「声かけ」と「質問」の工夫
読み聞かせ会では、途中で視線がそれたり、おしゃべりを始めたりする子どもの姿もよく見られます。
そんなとき、読み手がどんな言葉を返すかで、場の空気が少し変わります。
ここでは、現場でよく耳にする「声かけ」と「質問」の工夫を紹介します。
子どもの気持ちをひらく「質問」の工夫
読み聞かせ会では、物語の途中に軽い問いかけを交える読み手の方も多くいます。
問いかけを受け取った瞬間、子どもの目が少し輝き、物語の世界が自分の中で広がっていくのがわかります。
「このあと、どうなるかな」「さっきの子はどんな気持ちだったと思う?」——そんな一言が、子どもの想像をそっと動かすきっかけになるようです。
問いは、正解を求めるものではありません。
子どもの思ったことを受け止めるための合図のようなものです。
短く声をかけるだけでも、聞く姿勢が少し前向きに変わることがあります。
家庭でも、物語を読み終えたあとに「どこが好きだった?」「どんなところがおもしろかった?」と声をかけてみましょう。
きっと、お子さまなりの感じ方や発見が返ってきますよ。
質問は、話すことを促すよりも、思いを受け止めるための小さな扉。
答えを導くよりも、一緒に考える余白を残すことで、読書の時間がやわらかく続いていきます。
家庭でも試したい「声と間」が生きる絵本
絵本は、それぞれの物語に合った声のトーンや“間”があります。
テンポよく読むと笑いが広がるものもあれば、ゆっくりと間をとることで余韻が深まるものも。
ここでは、現場でよく読まれている絵本を例に、どんな読み方が子どもの耳に届きやすいかを紹介します。
気になる作品があればぜひ手に取ってみてくださいね。
リズムで引き込む——『めっきらもっきらどおんどん』
読み聞かせ会でも親しまれている作品です。
冒頭の「めっきらもっきら どおん どん」という不思議なことばが、聞く子どもの心を一瞬でつかみます。
声の強弱やテンポをつけやすく、読み手によって表情が変わるのもこの作品の魅力です。
多くの読み手は、リズムに合わせて声の高さを少し変えながら読み、物語に勢いを与えています。
そして、掛け声のあとにひと呼吸置く。自然と次を待つ空気が生まれます。
子どもの集中をすっと引き出すのが、この“動と静の切り替え”です。
家庭では、声量よりもことばのリズムを意識して、少しゆっくりめに読むのがおすすめ。
掛け声のあとに短い間を置くと、子どもの視線が自然と絵に向かい、物語の世界がより深まります。
絵本そのもののリズムが、聞く力を育ててくれる一冊です。
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静けさで包む——『パパ、お月さまとって!』
読み聞かせ会では、ページを大きく広げながら読むこの絵本に、子どもたちの視線が自然と集まります。
登場するのは、おつきさまと少女、そして月を取りに向かうお父さん。空にのびていくはしごの描写が印象的です。
声を張るよりも、静かな語り口で絵の動きを追うと、物語のやさしさがより際立ちます。
多くの読み手は、ページをめくるたびに一呼吸おき、ゆっくりと間を取ります。
特に月を取る場面では、「上へ、上へ」とのぼる動きを意識して、ゆっくりと声を重ねてみましょう。
その一言ごとに子どもの視線が上へ向かい、絵の世界へ自然と引き込まれていきます。
間の取り方ひとつで、夜の静けさや親子のあたたかさがより深く伝わる作品です。
家庭で読むときは、音よりも“間”を大切に。
少し声を落として、ゆっくりページをめくるだけで、お月さまを見上げているような穏やかな時間になります。
読み終えたあと、窓の外を一緒に見上げると、物語の余韻が静かに広がりますね。
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年齢に合ったリズムの一冊を選ぶと、集中が長続きします。年齢別絵本ナビゲーションから探してみてください。

子どもと本を深くつなぐ。児童書専門の司書が選んだ「おうち読書の環境」を作る道具
絵本を読む時間は、静かに心を整えるひとときです。
その空間を少しだけ整えると、集中の深さや物語への入り方が変わっていきます。
時間を意識する道具や、物語にそっと触れる小物も、子どもの世界を広げてくれます。
ここでは、児童書専門の司書としておすすめしたい「おうち読書」を支える道具を紹介します。
静かに集中を支える|タイマー
色ディスクで残り時間がひと目でわかるのがうれしい。カチカチ音がなく、物語のトーンを保ったまま“あと少し”の見通しを示せます。
🎁 Time Timer|MOD (視覚タイマー)
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大きめ表示と音量調整で、静かに使いたい場面にも合わせやすい。終了音を小さめにすれば、就寝前の読書にも寄り添います。
🎁 ドリテック|ラーニングタイマー(学習用・音量調整)
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物語に参加する小道具|指人形
軽いフェルトで手になじみやすく、場面の合図や擬音を乗せやすい小道具。
🎁 フェルト指人形セット(汎用/2〜5体・テーマ別)
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自分で選べる棚|表紙が見える絵本ラック
表紙が見える設計で次に読みたい本を自分で選びやすい。下段は図鑑や大きめ絵本の定位置づくりに役立ちそうです。
🎁 表紙が見える絵本棚 あすなろ
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読み聞かせをめぐる、よくある質問と小さな工夫
日々、多くのお子さんや保護者の方と接するなかで、読み聞かせにまつわるさまざまな声を耳にします。
「毎日読まなきゃいけないの?」「子どもがすぐ飽きてしまって…」——どの悩みにも、子どもとまっすぐ向き合う気持ちがにじんでいます。
ここでは、そうした声をもとに、読み聞かせをもう少し気楽に続けるためのヒントをまとめました。
明日の一冊を、肩の力を抜いて読んでみてくださいね。
Q1. 毎日読まなければいけませんか?
「続けること」が目的になってしまうと、読む時間が負担に感じられることがあります。
一日おきでも、週に数回でも、落ち着いて向き合える時間があることがいちばん大切。
短いお話を一冊でもいいし、ページを数枚だけ読んで終わる日があってもかまいません。
“読む日を積み重ねる”よりも、“読む時間を心地よくする”ことを意識してみるとよいですよ。
Q2. 子どもがすぐ飽きてしまいます。
読み聞かせ会を見ていると、集中して聞ける時間は年齢によって本当にさまざまです。
最後まで聞けない日があっても、それは自然なこと。
短いお話や、ページごとに絵が変わる作品を選ぶと、気分の切り替えがしやすくなるかもしれません。
読み聞かせを「最後まで聞く練習」にしないことで、親子の時間が少し穏やかになります。
Q3. 同じ本ばかり読みたがります。
何度も同じ本を読むのは、内容を覚えているからではなく、安心を感じているからです。
子どもにとっては、物語の繰り返しが“心のリズム”のようなもの。
しばらく同じ絵本を読んでから、似たテーマの別の本を一緒に並べておくと、自然に手が伸びることもあります。
変化を促すよりも、安心を軸にした“広がり方”を意識すると、読書の時間がやさしく続きますよ。
Q4. 何歳まで読み聞かせを続けたらいいですか?
「もう自分で読めるから」と読み聞かせをやめる時期に迷う方は多いようです。
けれど、読めるようになってからの読み聞かせにも、意味があります。
少し長いお話を一緒に読むことで、言葉の使い方や感情の流れを共有できる時間が続きます。
文字を追う力だけでなく、物語を“感じる力”を育てる時間として、年齢にこだわらずに続けてみてはいかがでしょうか。
まとめ|子どもと本をつなぐ、あなただけの図書室づくりを
読み聞かせには、決まった形や正解があるわけではありません。
声のトーン、間の取り方、そして空気のつくり方。
そのひとつひとつが、読む人と聞く人の関係によって変わっていきます。
読み聞かせ会で見てきた、たくさんの場面から感じるのは、
「一緒に過ごす時間そのもの」が、子どもに届いているということです。
今日読む一冊が、あなたと子どもをつなぐ小さな灯りになりますように。
それが、あなただけの、小さな図書室の始まりです。
