「いのち」がテーマの絵本|児童書専門の司書が場面別に選ぶ10冊

夕食の食卓で焼き魚を見つめる女の子の様子

「いのち」と聞くと、大きくて重いテーマに感じるかもしれません。

しかし、実は子どもが「いのち」に出会う場面はもっと日常の中にあります。

虫をつぶしてしまったとき、赤ちゃんはどこから来るのか不思議に思ったとき、食卓で魚の骨を見つめたとき、大切な人や生きものとの別れが気になり始めたとき……

入口が違うと、重なる本も変わってきます。

図書館でも、虫をつぶしてしまう子に合う絵本や、身近な人との別れを経験した子に手渡せる絵本を紹介する機会がありました。

身近な生きもの、誕生や体のつながり、食べること、別れへの不安

この記事では、その違いごとに入口を分けて、今の場面に重なりやすい本をたどれるように整理しました

目次

「いのち」がテーマの 絵本 早見

「いのち」といっても、子どもが立ち止まる場面はひとつではありません。

いま重なりやすい入口から、近い一冊を見つけやすいように3つに分けました。

早見①|虫や草花など、身近な生きものから「いのち」を感じたいとき

『てんとうむし みつけた』
身近な虫をこわいものではなく、見つめる対象として受け取りやすい絵本。
年齢目安:3歳〜 この本の紹介へ→

早見②|赤ちゃんの誕生や体のつながりを伝えたいとき

『あなたになるまで ひとつの細胞からの物語』
自分の始まりを、家族とのつながりの中で受け取りやすい。
年齢目安:4歳〜小学校低学年 この本の紹介へ→

早見③|大切な人や生きものとの別れにふれたいとき

『いのちの木』
別れの悲しみを、思い出やつながりへ少しずつ移していきやすい物語です。
年齢目安:3歳〜5歳 この本の紹介へ→

いのち×絵本|虫や草花など、身近な生きものから「いのち」を感じたいとき

ここでは「いのち」を大きく説明する前に、まずは身近な生きものに目を向けたい場面に合う絵本を紹介します。

虫をつぶしてしまって気まずそうにしているときや、草花や木をじっと見ているときは、小さな変化を追いやすい本から入るのがおすすめです。

📘 身近な季節の変化から生きものの気配を感じたいときは、春の季節絵本にもつながります。

【3歳〜】『てんとうむし みつけた』|身近な虫を、こわがる前に見つめたいときに

『てんとうむし みつけた』は、葉っぱの上のてんとうむしを見つけながら、姿や動きをじっくり追っていく絵本です。

羽の色や模様の違いにも目が向き、小さな虫を観察の対象として受け取りやすくなります。

かわいい、こわいで終わらせず、まずは見つけて見比べるところから入れるのも魅力。

命の話を急いで大きく広げるより、身近な生きものを落ち着いて見る時間をつくりたい日に重なります。

虫へのまなざしの入口になる一冊。

※本ページにはアフィリエイト広告が含まれます。

虫が気になるけれど、まだ少しこわさもある日に。
まずは見つけて見比べるところから入り、身近な生きものへ目を向けるきっかけになる一冊。

『てんとうむし みつけた』
文:岡島秀治/絵:稲田務
出版社:福音館書店
対象年齢:目安 3歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

【3歳〜】『はるが もぞもぞ』|春の変化から、生きものの気配を感じたいときに

『はるが もぞもぞ』は、春になって少しずつ動き出す生きものや自然の変化を、身近な景色の中でたどっていく絵本です。

土の下、草のあいだ、やわらいだ空気の中。

冬のあいだは見えにくかった動きが、あちこちで静かに始まります。

虫だけを取り出して見るのではなく、草花や季節の移り変わりごと受け止められるのも◎。

生きものは特別な場所にいるのではなく、いつもの景色の中にもいる──そのことが、読み終わったあとにすっと残ります。

春の草むらや土の下で始まる小さな動きから、身近な景色にも命があることを感じ取りやすくなります。

『はるが もぞもぞ』
作:内田麟太郎/絵:南塚直子
出版社:ポプラ社
対象年齢:目安 3歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

【3歳〜小学校低学年】『いっぽんのき』|木やそのまわりの生きものから、続いている命を見つめたいときに

『いっぽんのき』は、町の中に残った一本のどんぐりの木と、そのまわりで続いていく時間を見つめる絵本です。

空の上から町の変化が描かれ、小さな公園に残った木の存在が静かに浮かび上がります。

木だけを眺める話ではなく、そのそばで暮らす生きものの動きも重なってくるところが印象的。

虫や草花からもう少し視野を広げて、自然のつながりを感じたい場面にもなじみます。

大きな言葉で命をまとめるのではなく、ひとつの木のまわりで続いている時間が、読み終わったあとにそっと残ります。

虫や草花から少し視野を広げたい日に。
一本の木のまわりで続く時間をたどりながら、身近な自然のつながりが静かに見えてきます。

『いっぽんのき』
文:塩野米松/絵:松本春野
出版社:農山漁村文化協会
対象年齢:目安 3歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

いのち×絵本|赤ちゃんの誕生や体のつながりを伝えたいとき

赤ちゃんはどこから来るの、と聞かれたとき──下の子が生まれる前後や、おなかの中の話に興味が向き始めた時期には、命の始まりをやさしくたどれる絵本が役立ちます。

この章では、体の成り立ちを見ていく本と、家族で赤ちゃんを待つ時間を描く本を並べました。

【4歳〜小学校低学年】『あなたになるまで ひとつの細胞からの物語』|自分の始まりを、体のつながりから受け取りたいときに

『あなたになるまで ひとつの細胞からの物語』は、ひとつの受精卵から赤ちゃんへ育っていく過程を、やさしい言葉と絵でたどる絵本です。

体の中で何が起きていたのかを順を追って見ていけるので、「生まれる前」の時間が急に遠い話になりません。

難しい説明を前に出しすぎず、少しずつ大きくなっていく流れが自然に入ってきます。

赤ちゃんの誕生を、ある日突然の出来事ではなく、長い時間の積み重ねとして受け取りやすい構成。

自分もこうやって育ってきたのだと感じることで、命の話を家族のつながりの中で受け止めたい場面にもなじみます。

読み終えたあと、自分の始まりを少し近くに感じられる一冊です。

「赤ちゃんはどこからくるの?」に、急がず向き合いたい日に。
ひとつの細胞から育つ時間をたどりながら、自分の始まりを家族のつながりの中で受け取りやすくなります。

『あなたになるまで ひとつの細胞からの物語』
著:高橋しづこ/絵:ジェラルディーン・オンドレゼック/監修:堤 治
出版社:扶桑社
対象年齢:目安 4歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

【3歳〜】『おなかのあかちゃん、もういいか〜い?』|赤ちゃんを待つ時間ごと、家族の出来事として感じたいときに

『おなかのあかちゃん、もういいか〜い?』は、ママのおなかにやってきた赤ちゃんが、少しずつ大きくなっていく時間をたどる絵本です。

見えないおなかの中を、かくれんぼのような感覚でのぞき込んでいくつくり。

体の仕組みを細かく説明し切るというより、赤ちゃんを待つ時間そのものへ気持ちが向きやすくなります。

めくりしかけを追いながら読むうちに、生まれてくるまでの変化がぐっと身近に見えてきます。

下の子の誕生が近いときや、家族みんなで迎える気持ちをあたたかく分け合いたい場面にもよく合います。

読み終えたあと、赤ちゃんを待つ毎日そのものが少し特別に感じられそうです。

下の子を待つ時間を、家族みんなの出来事として受け止めたい日に。
めくりながら読むうちに、おなかの赤ちゃんを迎える毎日が少し近く感じられます。

『おなかのあかちゃん、もういいか〜い?』
作:豪田トモ/絵:いけみやみな
出版社:ポプラ社
対象年齢:目安 3歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

いのち×絵本|食べることから「いのち」を考えたいとき

食卓は、「いのち」をいちばん日常の中で感じやすい場所かもしれません。

魚の骨をじっと見ていたり、これも生きていたのと聞いてきたりするときは、食べることの先にある命へ目を向けやすい本が役立ちます。

ここでは、身近な食事から入れる本と、命が次の命を支える流れまで見ていける本を選びました。

【3歳〜】『さかなを たべた あとの ほね』|食べたあとの骨から、命のことを見つめたいときに

『さかなを たべた あとの ほね』は、魚を食べたあとに残る骨を見つめながら、いつものごはんの向こう側へ目を向けていく絵本です。

最初に並ぶのは、おいしそうに描かれた魚の料理。

そのあとに現れる骨の姿が印象をくっきり変え、食べたものも生きものだったことが自然に伝わってきます。

重い言葉で命を語らなくても、食卓のあとに残るかたちから考え始められるつくり。

加藤休ミさんのクレヨンとクレパスの絵は、料理も骨も驚くほど生々しく、目の前にあるものをじっと見たくなります。

毎日のごはんの中で、食べることと命のつながりをそっと感じたい場面によくなじみます。

ごちそうさまのあとに残る景色が、少し変わって見えてくる作品です。

魚を食べたあとの骨に目を向けながら、いつものごはんの見え方を少し変えたい日に。
食べることの先にある命を、無理なく感じやすくなります。

『さかなを たべた あとの ほね』
文・絵:加藤休ミ
出版社:福音館書店
対象年齢:目安 3歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

【5歳〜小学校低学年】『クジラがしんだら』|ひとつの命が終わったあとも、別の命を支える流れを知りたいときに

『クジラがしんだら』は、命を終えたクジラが深い海へ沈んだあと、海の底で何が起きるのかをたどる絵本です。

最初に現れるのは、えさの少ない深海に落ちてきた大きな体。

そこへサメやコンゴウアナゴ、グソクムシ、ホネクイハナムシなどが集まり、長い時間をかけてクジラの体を受け取っていきます。

死を終わりだけで閉じず、その先にも別の命を支える時間が続いていく構成。

少し視野の広がる内容ですが、食べること、生きること、つながることが一本の線で見えてきます。

読み終えたあと、命はそこで切れて終わるのではなく、別の場所へ受け渡されていくのだと静かに感じられる作品。

食べることの先にある命のつながりまで見てみたい日に。
深海で続く受け渡しを追いながら、終わりのあとにも続く時間へ目を向けやすくなります。

『クジラがしんだら』
文:江口絵理/絵:かわさきしゅんいち/監修:藤原義弘
出版社:童心社
対象年齢:目安 5歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

いのち×絵本|大切な人や生きものとの別れにふれたいとき

別れの場面では、すぐに気持ちを整理しようとしても言葉が追いつかないことがあります。

ここでは、悲しみを急いで片づけるのではなく、その子の受け止め方に合わせて少しずつ読める絵本を集めました。

家族との別れに向く本、思い出を支えにしやすい本、ペットとの別れを静かに見つめる本に分けて見ていきます。

📘 別れの気持ちを急がず言葉にしていきたいときは、気持ちを言葉にする絵本も参考になります。

【3歳〜5歳】『いのちの木』|別れの悲しみを、思い出やつながりへ少しずつ移していきたいときに

『いのちの木』は、森の仲間たちにとって特別な存在だったキツネの旅立ちを描く絵本です。

悲しみをすぐに明るさへ変えるのではなく、思い出を語り合う時間が静かに重ねられていきます。

いてくれたときのぬくもりが、いなくなったあとにも残っていく構成。別れを怖さだけで強く押し出さず、心の中に残るつながりへ目を向けやすくなります。

幼い子にとっても、失ったあとに残るものをそっと感じやすい作品です。

読み終えたあと、思い出すことそのものがあたたかな行為に見えてきます。

大切な存在を思い出す時間を、こわさよりあたたかさに寄せたい日に。
いなくなったあとにも残るつながりを、静かに受け止めやすくなります。

『いのちの木』
作・絵:ブリッタ・テッケントラップ/訳:森山京
出版社:ポプラ社
対象年齢:目安 3歳〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

【4歳〜】『ママのセーター』|大切な人を亡くしたあとの気持ちを、急がず抱えていたいときに

『ママのセーター』は、ママを亡くした女の子が、のこされたセーターに触れながら悲しみと向き合っていく絵本です。

言葉でうまく説明できない気持ちを、におい、手ざわり、ぬくもりの記憶からたどっていくつくり。

元気を出す方向へ急がず、いない毎日の中で何を感じるのかを静かに見つめていきます。

父親の存在もそっと描かれていて、悲しみをひとりで抱え込まない空気があるのも印象的です。

身近な人との死別にふれるとき、まだ整理できない気持ちのままでページをめくれる作品。

読み終えたあと、悲しいままでも手放さなくてよいものがあると感じやすくなります。

大切な人がいない毎日を、急いで明るくしなくてよい日に
。残されたものに触れながら、言葉にならない悲しみの置き場を少しずつ見つけていけます。

『ママのセーター』
文・絵:ジェイド・パーキン/訳:おおくぼ かおり
出版社:西村書店
対象年齢:目安 4歳〜

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【小学校高学年向け】『ポーはゆめをみる』|ペットとの別れを、重く言い切りすぎず受け止めたいときに

『ポーはゆめをみる』は、エドワードと年老いた犬のポーが過ごす最後の時間を、静かな距離感で描く絵本です。

ポーはもう走り回らず、眠って夢を見ることが多くなりました。

それでもふたりは外に出て、いつもの時間を重ねていきます。やがて訪れる別れを強い言葉で押し出すのではなく、老いとさよならが日々の延長にあることをそっと見せてくれるつくり。

読んですぐに気持ちが整理されるタイプの本ではありませんが、そのぶん、言葉になりきらない寂しさを抱えたままページをめくりやすくなっています。

読み終えたあと、いなくなったあとの静けさまで含めて、大切な存在を思い返す時間が残ります。

ペットのいない静けさに、まだうまく言葉が追いつかない日に。
老いと別れを日々の延長としてたどりながら、大切な存在を思い返す時間が静かに残ります。

『ポーはゆめをみる』
文:エスペン・デッコ/絵:マーリ・カンスタ・ヨンセン/訳:村井理子
出版社:ほるぷ出版
対象年齢:目安 小学5・6年生〜
 

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

公園で虫を見つめる4歳くらいの男の子と大人の女性(母親)の様子

いのち×絵本|親が言葉を探したいときの関連書籍

子どもにどう伝えればよいか迷うときは、絵本を読む前に親の側で言葉を整理しておきたい場面もあります。

ここでは、誕生や体のつながりをどう話すか、別れを経験した子にどう関わるかを考えたいときに役立つ本をまとめました。

【保護者向け】『「げっけいのはなし いのちのはなし」から広がる世界』|誕生や体の質問に、落ち着いて言葉を返したいときに

『「げっけいのはなし いのちのはなし」から広がる世界』は、絵本『げっけいのはなし いのちのはなし』を土台にしながら、子どもへ「性」と「生」をどう伝えるかを考えていく保護者向けの本です。

著者自身の絵本活用ポイントが、Q&A形式でひとつずつほどかれていくつくり。

赤ちゃんはどこからくるのか、体のことをどう話すかといった問いに、急いでうまく答えようとしなくてもよいことが見えてきます。

月経や命の始まりを特別な話として遠ざけるのではなく、毎日の会話の中で少しずつ扱っていく視点も受け取りやすい内容です。

『げっけいのはなし いのちのはなし』を読んだあとに、親の側の言葉を整えたい場面にもよくなじみます。

聞かれた瞬間に慌てないための“土台”が、静かに手元に残る一冊です。

「赤ちゃんはどこから来るの?」に戸惑ったときに。
絵本『げっけいのはなし いのちのはなし』の活かし方もたどりながら、親の言葉の土台を整えやすくなります。

『「げっけいのはなし いのちのはなし」から広がる世界』
著:大石真那
出版社:みらいパブリッシング
対象年齢:目安 保護者向け

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

※参考※『げっけいのはなし いのちのはなし』
著:大石真那/絵:深井あずさ
出版社:みらいパブリッシング
対象年齢:目安 小学校中学年〜

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

【保護者向け】『もう会えない人を思う夜に』|喪失のあとに残る気持ちを、急いで片づけず抱えたいときに

『もう会えない人を思う夜に』は、大切な人と死別したあとに残る悲しみや喪失感と、どう付き合っていくかを見つめる本です。

大学での研究と実践をもとに、死別を経験した人たちの声を整理しながら、悲嘆に向き合うためのヒントが28項目にまとめられています。

悲しみを早く乗り越える方向へ急がず、そのままの気持ちを抱えた時間にも置き場をつくろうとする構成。

つらさを一般論で包むのではなく、いま起きている反応をどう受け止めるかが見えやすくなります。

身近な別れのあと、励ます言葉より先に、自分の感情や関わり方を落ち着いて整えたいときに重なります。

※一般の死別当事者へ向けたグリーフケア本で、子ども向けではありません。

大切な人を失ったあとの気持ちを、無理に整えず抱えていたいときに。
悲しみとの付き合い方を急がず見つめながら、自分の言葉を探す助けになります。

『もう会えない人を思う夜に』
著:坂口幸弘/赤田ちづる
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
対象年齢:目安 保護者向け

価格・在庫はリンク先でご確認ください。

まとめ|その日の出来事に近い一冊から、いのちの話を始めてみる

「いのち」を伝えたいときも、最初から大きな答えを渡そうとすると、子どもには少し遠く感じられることがあります。

虫を見つめた日、赤ちゃんのことを聞かれた日、食卓でふと手が止まった日、別れのさみしさが強く出た日。

そんな場面の近くにある一冊のほうが、今の気持ちに届きやすくなります。

すぐに理解させることより、気になっていることを一緒に見つめる時間のほうが役立つこともあります。

家で交わした小さな会話の続きを支える本として、その子の今に合うものを選んでみてください。

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この記事を書いた人

児童書専門の司書、子どもは2人です。子どもと本をつなぐ小さな図書室のような情報サイト『Room E726.6』を運営しています。

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