ランドセルの前で手が止まる。玄関まで来たのに、靴をはこうとしない。
「学校に行きたくない」と言われた朝。
理由を聞いても、はっきりした答えが返ってくるとは限りません。
友だちのことかもしれない。
教室の空気かもしれない。
本人にもまだ、何がつらいのか分からないまま、体だけが先に止まっていることも。
そんなときに本ができるのは、その子の中で起きていることを、少し離れた場所から一緒に見つめることかもしれません。
絵本の中のだれかの姿を借りると、言葉にならなかった気持ちが、ひとつの場面として見えてくることがあります。
今回は、児童書専門の司書の視点で、学校に行きたくない気持ちに寄り添う絵本と低学年向けの短い読み物、親が子どもの見ている世界を考えるための本を紹介します。
学校に行きたくない気持ちに寄り添う絵本の選び方・早見
朝の不安、教室のしんどさ、友だち関係、自分だけ浮いている感覚。
「学校に行きたくない」という同じ言葉の中にも、いくつかの理由が隠れていることがあります。
ここでは、本を選ぶ前に見ておきたい視点と、今の状態に近い本を早見で整理します。
絵本を選ぶ前に見ておきたい3つのこと
「学校に行きたくない」と言う子に本を選ぶときは、先に次の3つを見ておくと、本の役割がはっきりします。
・学校へ向かわせるためではなく、気持ちをほどく本を
・朝の不安、教室のしんどさ、友だち関係など、今の状態に近い本を
・子どもに読む本だけでなく、親が落ち着いて考えるための本も候補に入れる
本を読むことが、すぐ答えを出す時間にならなくても大丈夫です。
今、何がつらいのかを急がず見つめるために、本をそばに置く。
そのくらいの距離で、まずは十分です。
📘 夏休み明けや2学期前後の不安が中心のときは、夏休み明けに読みたい絵本も参考になります。
早見|学校に行きたくない気持ちに寄り添う本3選
朝の不安、教室のしんどさ、親の焦り。
今いちばん近いところから、本文へ進めるように並べています。
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朝、学校へ向かう前に止まってしまう子へ
『このままじゃ学校にいけません』
学校へ行きたくない日に、別の何かになりたいほどの気持ちを受け止める絵本。
年齢目安:小学校低学年から
教室や集団の中で、自分だけ浮いている気がする子へ
『ぼくは、ういてる。』
みんなと少し違う感覚を、責めずに見つめられる物語。
年齢目安:小学校低学年から
親が焦りすぎず、関わり方を考えたいときへ
『不登校・行き渋り…タイプ別でわかる 「学校に行きたくない」と言われたときの親のかかわり方』
「学校に行きたくない」と言われた親が、学校へ戻す前に子どもとの距離感を見直すための本。
年齢目安:保護者向け
学校に行きたくない子への本|朝、学校へ向かう前に気持ちが止まってしまうとき
前の夜は何も言っていなかったのに、着替えの途中で手が止まる。
朝ごはんの前で黙る。
時間だけが進んでいく中で、親も声のかけ方に迷いますよね。
ここからは、朝の「行きたくない」を急いで説明させず、子どもの中にある不安や重さを、物語の形で見つめられる本を紹介します。
『このままじゃ学校にいけません』|別の姿になりたい朝の気持ちを見つめる
『このままじゃ学校にいけません』は、学校になじめないエディが、コウモリやイカ、カメレオン、ミミズなど、別の姿になってやり過ごしたいと願う絵本です。
からかわれたり、答えがわからなかったりするたびに、「自分のままではいられない」と感じる苦しさが、想像の姿になってあらわれます。
学校へ行きたくない理由を整理するのではなく、朝のこわばりを物語の中に映すつくり。
別の姿になりたいほどの朝。
読み終えたあと、「行きたくない」と言える場所が少し残ります。
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学校へ向かう前に気持ちが固まる朝へ。
別の姿になりたいほどの苦しさを、責めずに見つめる入口になります。
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『きょうはおやすみします がっこうのてんこちゃん』|「行きたくない」を家族に伝える朝
『きょうはおやすみします がっこうのてんこちゃん』は、学校を休んだてんこちゃんが、後日また「行きたくない」気持ちを抱え、家族へ伝えていく読み物です。
熱があるから休む、という理由の奥に、本人にもまだはっきり言えない気持ちがあるところから始まります。
結論を急がず、朝の家の中で、てんこちゃんの言葉を待つ時間が描かれています。
休むか行くかだけでは割り切れない朝。
親子で読むと、「今日はどうする?」の前に、まず気持ちを聞く入口が残ります。
てんこちゃんの言葉を追いながら、休みたい気持ちを家族で受け取る時間が生まれます。
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学校に行きたくない子への本|友だち関係がつらくなっているとき
学校に行きたくない理由が、授業や教室ではなく、友だちとの関係にあることも少なくありません。
はっきりしたけんかではなくても、小さなひっかかりが重なると、学校へ向かう足は重くなります。
ここで紹介するのは、からかわれるつらさ、言い出せないさびしさ、仲間と同じでいられない不安を、子どもの側からたどれる本です。
『キンチョウくん!』|からかわれる場面で、味方になる心を見つめる
『キンチョウくん!』は、けがをした子ダヌキのキンチョウくんが、そめもの店の娘もえちゃんに助けられ、今度は自分がもえちゃんを応援しようとする絵本です。
なわとびが苦手なもえちゃんをからかう男の子たちを前に、キンチョウくんは仲間と人間に化けて知恵をしぼります。
友だち関係のつらさを、やられた子だけでなく、そばで見ている子、力になろうとする子の側から描いているところが特徴です。
からかいを前にした、小さな味方の奮闘。
学校であったことを責めて聞き出す前に、「味方がいる」という心強さへ目を向けられます。
からかわれる場面を見た子の心にも届く絵本。
キンチョウくんの奮闘から、味方になる心強さを受け取れます。
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『さくらちゃんのかえりみち』|友だちと帰りたい気持ちを言えない帰り道
『さくらちゃんのかえりみち』は、友だちとおしゃべりしながら帰りたいさくらちゃんが、家が学校から近いことを言い出せずにいる絵本です。
転校生のあおいちゃんに「いっしょに帰ろう」と声をかけられたうれしさから、さくらちゃんは家の前を通り過ぎてしまいます。
友だちがほしい気持ちと、本当のことを言えないもどかしさが、帰り道の短い時間に重なります。
たった1分の帰り道が、長く感じられる放課後。
友だち関係を「いる/いない」だけで見ず、つながりたい気持ちの揺れまでたどれる絵本です。
友だちと帰りたい気持ちを言えないさくらちゃんの帰り道。
小さなうそまで含めて、つながりたい心を見つめます。
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『わたしのおそろい』|同じしるしがなくても、仲間でいられるかを見つめる絵本
『わたしのおそろい』は、ミーコと仲間たちが持っている「おそろいのモノ」をめぐって、ほんとうの仲間のしるしを考える絵本です。
みんなと同じものを持っていることが、つながっている安心に見える時期があります。
けれど、ある日ミーコ以外の仲間が別のものを身に着けはじめると、「同じ」でいることの意味が揺らぎます。
仲間のしるしは、目に見えるものだけなのか。
友だちの輪の中で自分だけ違うと感じたとき、つながりを見直す静かな入口になります。
みんなと同じしるしが揺らいだミーコの物語。
友だちの輪から外れたように感じる不安を、目に見えないつながりへ戻してくれます。
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📘 友だちとの距離感や、関係のモヤモヤが気になるときは、友だち関係のモヤモヤに寄り添う絵本も参考になります。
学校に行きたくない子への本|自分だけ浮いているように感じるとき
学校のしんどさは、誰かに強く傷つけられたときだけに生まれるものではありません。
まわりと少しずれている気がする。
自分の感じ方や表現が、教室の中で置き場所をなくしている。
そんな日が重なると、教室に入ること自体が苦しくなることがあります。
ここでは、「同じにできないこと」を直すのではなく、その子の見え方や感じ方を物語の中で受け止められる本を選びます。
『ぼくは、ういてる。』|みんなと少し違う感覚を、そのまま見つめる物語
『ぼくは、ういてる。』は、一平くんがときどき体ごとういてしまう感覚を通して、まわりと少し違う自分を見つめていく物語です。
ぼんやりしているように見られ、叱られたり、笑われたり、置いていかれたりする場面もあります。
けれど、ういているからこそ見えるものがあり、同じようにういているほのかちゃんとの出会いも描かれます。
みんなの中にいるのに、少しだけ離れているような時間。
学校で何がつらいのかを言葉にできない子の違和感を、急いで直さず見つめられる本です。
みんなの中で少しだけ浮いているような感覚を、一平くんの物語からそっと見つめ直せます。
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『なのはないろの わたしのえ』|分かってもらえなかった絵から、自分の感じ方を見つめる
『なのはないろのわたしのえ』は、くるみが大切に描いた菜の花畑の絵を、まわりにすぐ受け取ってもらえないところから始まる絵本です。
お母さんと見た景色を画用紙いっぱいに表したのに、まわりには未完成のように受け取られてしまいます。
学校帰りに出会った蜂飼いのおじいさんの言葉で、くるみは自分にしか描けないものへ目を向けていきます。
くるみにしか描けない、画用紙いっぱいの菜の花色。
正しく描けたかではなく、その子が何を見て、どう感じたのかへ目を戻せる絵本です。
大切に描いた絵をめぐる、くるみとまわりの受け取り方のずれ。
評価の前に、その子だけの感じ方へ目を戻せます。
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『青い花の えかきさん』|学校が苦手な気持ちを、静かに受け止める絵本
『青い花の えかきさん』は、学校が大きらいな「わたし」が、友だちがいないことや勉強の難しさ、間違えるこわさを抱えている絵本です。
おしゃべりも苦手で、何をしてもへただと感じてしまう姿には、学校の中で自分だけうまくなじめない子の苦しさが重なります。
ママの言葉にふれながら、「みんなと同じでない自分」へ少しずつ目を向けていきます。
みんなと同じようにできない、わたし。
「行きたくない」の後ろにある不安を、ひとつに決めつけず受け止めるための静かな入口になります。
友だち、勉強、間違えるこわさが重なった「行きたくない」気持ちへ。
違っている自分を見つめる静かな時間が残ります。
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親が読む本・親子で考える絵本|学校に行きたくない子どもの見え方を知りたいとき
子どもが学校へ向かえない日が続くと、親の頭の中には、いくつもの心配が同時に浮かびます。
休ませていいのか。
学校には何を伝えるのか。
友だち関係を聞いたほうがいいのか。
何も聞かずにいるほうがいいのか。
答えを急ぎたくなる場面ほど、子どもが何を見ているのかが分かりにくくなることがあります。
ここで扱うのは、保護者向けの本です。
子どもの側から学校や家庭がどう見えているのかを知る手がかりとして選んでいます。
『不登校・行き渋り…タイプ別でわかる 「学校に行きたくない」と言われたときの親のかかわり方』|学校へ戻す前に、親子の距離感を整える【保護者向け】
『不登校・行き渋り…タイプ別でわかる 「学校に行きたくない」と言われたときの親のかかわり方』は、子どもに「学校に行きたくない」と言われたとき、親がどう受け止め、どう関わるかを考える保護者向けの本です。
学校へ戻すことだけに気持ちが向くと、親も子どもも疲れ切ってしまうことがあります。
この本では、不登校・行き渋りをタイプ別に見ながら、親子の距離感や社会とのつながり方を整理していきます。
急がせる前に、まず距離を見直す。
子どもの気持ちを受け止めたい親が、焦りを少し横に置いて向き合うための本です。
「学校に行きたくない」と言われた親へ。
学校へ戻すことだけに急がず、子どもとの距離感を見直す視点が得られます。
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『マンガでわかる! 学校に行かない子どもが見ている世界』|子どもの沈黙の奥にある景色を知る【保護者向け】
『マンガでわかる! 学校に行かない子どもが見ている世界』は、学校に行かない子どもの内側を、マンガと解説でたどる保護者向けの本です。
出席や欠席、生活リズム、勉強の遅れに目が向くとき、親から見える世界と子どもから見える世界の違いをいったん並べて見せてくれます。
マンガの場面があることで、親子のやりとりや子どもの表情が、説明だけではなく具体として入ってきます。
親の焦りと、子どもの沈黙のあいだにある距離。
登校の判断を急ぐ前に、子どもが何に疲れ、何を言葉にできずにいるのかへ視点を戻せる本です。
出席や欠席の前に、子どもが見ている世界へ目を向ける保護者向けの本。
親の焦りを少し横に置いて、向き合う視点を整えます。
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『子どもの不登校が心配になったら知りたいことが全部のってる本』|不安でいっぱいの親に、見通しを戻す【保護者向け】
『子どもの不登校が心配になったら知りたいことが全部のってる本』は、不登校が心配になった保護者へ、初期対応から家庭での過ごし方、学校外の学びや進路までを広く示す実用書です。
子どもの気持ちを受け止めたいと思っていても、情報が足りない不安があると、親の声かけまで固くなることも。
本書では、学校とのやりとり、家庭での環境づくり、フリースクールや通信制高校など、知っておきたい項目を段階ごとに確認できます。
いま決めることと、あとから考えてよいこと。
子どもを急がせる前に、親が全体像を落ち着いて見渡すための一冊です。
不登校への不安が一気にふくらんだ保護者へ。
初期対応から進路までを見渡し、親の焦りを整理する助けになります。
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まとめ|本があると、「行く・行かない」の前の気持ちに目を向けられる
学校に行きたくない気持ちは、ひとつの理由だけでできているとは限りません。
教室の空気、友だちとの距離、自分だけ違うように感じる苦しさ。
子どもの中では、それぞれが重なったまま、まだ言葉になっていないこともあります。
本を読む時間は、その理由を当てるための時間ではありません。
物語の中に似た場面を見つけたり、保護者向けの本で子どもの見ている世界を知ったりしながら、親が少し落ち着いて子どもを見るための時間です。
すぐに答えを出せない日にも、本はそばに置けます。
親子で同じ本を開く日もあれば、親が先に読んで考える日もある。
その積み重ねが、「行く・行かない」の前にある気持ちを見落とさない支えになります。
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