絵本をたくさん読んできた子に、そろそろ読み物を手渡したい。
けれど、急に文字の多い本へ進めてよいのか、どんな本ならその子のペースに合うのか、迷ってしまいますよね。
図書館でも、「ひとり読みの本を選びたい」「読み聞かせで作ってきた流れを、そのまま読書につなげたい」という相談をよく受けます。
この時期に手に取りたい本のひとつが、「幼年童話」と呼ばれる読み物です。
絵本より文章は増えますが、挿絵が多く場面の区切りが分かる本も多いため、絵をたよりにしながら少し長いお話を追っていけます。
はじめての読み物は、絵本の時間を終わらせるための本ではありません。
絵本で味わってきた楽しさを残したまま、子どもの読む力と気持ちに合う一冊を、いっしょに見つけていきましょう。
はじめての読み物は、絵本からひとり読みに進む橋渡し|選ぶポイントとおすすめ早見
はじめての読み物を選ぶときは、子どもがどこを手がかりに読めるかを見ると選び方が定まります。
まずは、はじめての読み物を選ぶときに見ておきたいポイントを整理し、そのあと迷ったときの入口になる3冊を見ていきましょう。
はじめての読み物の選び方|絵本の延長で読める本から始めよう
はじめての読み物は、文字を追う力だけで選ばなくても大丈夫。
選ぶときは、次のような点を見ておくと、子どもに合う本の輪郭が見えてきます。
🌱はじめての読み物を選ぶときに見ておきたいポイント
・文字が大きく、行間にゆとりがある
・挿絵が多く、場面の様子を絵から追える
・一話、または一章が短い
・最後まで読み切った実感を持てる長さ
・親子で途中まで読んでも流れが切れにくい
・気に入ったら、同じシリーズの次の一冊へ進める
・学校生活や友だちなど、子どもの日常に近い場面がある
絵を見ながら場面を追う、途中まで一緒に読む、短い章を読み切る。
そうした小さな経験が重なると、子どもは少し長いお話にも手を伸ばせるようになります。
迷ったらここから|はじめての読み物おすすめ3冊
はじめての読み物で迷ったら、子どもの今の読み方に近い本から見ると選び方が定まります。
ここでは、絵本の延長で読める本、短いお話を読み切れる本、シリーズで次へ進める本を、入口として3冊にしぼりました。
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絵本の延長で読める読み物
『スナックこども』
絵が多く、場面を見ながら物語を追える一冊。
絵本から少し長いお話へ移る時期に、読み物の雰囲気を味わえます。
年齢目安:小学校低学年から
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短いお話を読み切る読み物
『こぶたのぐるた しいくがかりは せきにんじゅうだい』
32ページの短い物語です。
一冊を最後まで読めた感覚を持ちたい時期に、負担を大きくせず手渡せます。
年齢目安:小学校低学年から
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シリーズで次へ進める読み物
『おばけのソッチ キャン・キャン・キャンディー!』
小さなおばけのソッチが登場するシリーズの一冊。
登場人物や世界観を気に入ったら、次も同じシリーズから選べます。
年齢目安:5歳・6歳・小1・小2
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絵が多くて安心して読める、絵本の延長の読み物
絵本から読み物へ進む時期は、絵を見ながら場面を確かめられる本が支えになります。
文字だけで追う前に、表情や動きからお話の流れをつかむ。絵本で親しんできた読み方の延長です。
ここでは、絵の力を借りながら、少し長いお話へ進める読み物を見ていきます。
『スナックこども』|絵を追いながら読み物の世界に入る
『スナックこども』は、おかあさんに腹を立てたゆのんが、子どもだけが入れる不思議なお店へ行く絵童話です。
ベッドの下から続く一本道の先にあるのは、ぐちを言ったり、好きなものを飲んだり、歌ったりできる「スナックこども」。
絵が多く、会話や場面の変化を目で追えるため、文字だけでお話を進める前の子にも入り口が見つかります。
48ページの分量も、絵本より少し長いお話へ移る時期にちょうどよい幅です。
親子で途中まで読んだあと、自分で続きをめくってみたくなる、読み物への橋渡しになる本です。
※本ページにはアフィリエイト広告が含まれます。
ベッドの下の道をたどると、子どもだけの不思議なお店へ。
絵を追いながら、少し長いお話の世界に入れます。
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『こてんちゃんがきた!』|教室にやってきた“ちがう”子から物語へ
『こてんちゃんがきた!』は、ゆずくんのクラスに、羽のあるこてんちゃんがやってくる低学年向けの読み物です。
ランドセルではなく、背中には羽。上履きではなく下駄をはき、教室でも帽子を取らないこてんちゃんに、まわりの子たちは戸惑います。
学校の教室という知っている場所から始まるため、子どもは場面を思い浮かべながら物語に入れます。
絵を見てこてんちゃんの様子を確かめ、文章でゆずくんの気持ちを追っていく読書。
読み聞かせから自分で読む段階へ移る時期に、「ちがう子とどう出会うか」を物語の中で感じられる本です。
羽のあるこてんちゃんが教室にやってくる。
見た目やふるまいの“ちがい”に戸惑いながら、物語の先を追いたくなる読み物です。
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📘 まだ文字を読む入口にいる子には、文字に興味を持ち始めた子の絵本も参考になります。
短いお話を最後まで読める、達成感のある読み物
読み物へ移る時期に、いきなり長い一冊を目標にしなくても大丈夫です。
まずは、お話の始まりと終わりを子ども自身が受け取れること。
短い物語でも、ページを閉じたときに「読めた」という感覚は残ります。
一冊を読み切る経験を、軽い分量の本から重ねていきましょう。
『こぶたのぐるた しいくがかりは せきにんじゅうだい』|32ページで「読めた」に届く
『こぶたのぐるた しいくがかりは せきにんじゅうだい』は、1年生のぐるたが飼育係になり、金魚の世話にはりきる読み物です。
ところが、クラスメイトのこんきちと言い争ううちに、水槽を割ってしまいます。
金魚を助け、先生に正直に謝るまでの出来事が、32ページの短いお話の中にまとまっています。
飼育係という学校での役割があるため、子どもはぐるたのあわてる気持ちや、謝る場面を自分の生活に重ねて読めます。
長い本へ進む前に、まず一冊を最後まで読み切る経験を渡せる読み物です。
飼育係になったぐるたが、水槽を割ってしまったあと金魚を助け、先生に謝るまで。
32ページで一冊を読み切る達成感があります。
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『ちいちゃんのおもちゃたち』|3つのお話を少しずつ味わう
『ちいちゃんのおもちゃたち』は、ちいちゃんの部屋にいるおもちゃたちの秘密の時間を描いた読み物です。
ちいちゃんが小学生になって、あまり遊ばなくなったおもちゃたち。
けれど、ちいちゃんや家族が見ていないところでは、おもちゃどうしで遊んだり、冒険したりしています。
全3話に分かれているため、今日はひとつ、次はもうひとつと、区切りをつけて読める構成です。
80ページの本でも、短いお話ごとに達成感を重ねながら、読み物の時間へ入っていけます。
ちいちゃんが見ていない間に、おもちゃたちの秘密の時間が始まります。
3つのお話を区切って読める、はじめての読み物候補。
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📘 読めた本を夏休みの読書感想文にもつなげたいときは、低学年の読書感想文におすすめの本も参考になります。
シリーズで次へ進みたくなる読み物
シリーズ本のよさは、その気持ちを次の一冊へつなげられるところ。
同じ登場人物、同じ世界にもう一度会えるので、新しい本でも入口がまったく知らない場所になりません。
最初から全巻をそろえる必要はありません。
まず一冊。
気に入ったら次の巻へ。
子ども自身が「次はこれ」と選ぶ流れを作れるのが、シリーズの読み物です。
『おばけのソッチ キャン・キャン・キャンディー!』|小さなおばけの歌からシリーズへ
『おばけのソッチ キャン・キャン・キャンディー!』は、歌うのが好きな小さなおばけ・ソッチが主役の読み物です。
歌のうまいヒロくんと学芸会に出たくて、ソッチは声がよくなるキャンディー作りに挑戦します。
おばけが出てくるお話でも、中心にあるのは歌いたい気持ちや、友だちと同じ舞台に立ちたい思いです。
アッチ・コッチ・ソッチの世界を知っている子には、なじみのあるシリーズの安心感もあります。
一冊を読み終えたあと、「次はどのおばけにしよう」と、同じ世界の別のお話へ目が向く読み物です。
歌うのが好きなソッチが、学芸会を目指してキャンディー作りに挑戦。
シリーズの世界から、次の一冊を選びたくなる読み物です。
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『やまの動物病院』|夜の病院に集まる動物たちを追う
『やまの動物病院』は、町の動物病院が、夜になると山の動物たちの病院に変わる幼年童話です。
病気やけがをしたキツネ、リス、コウモリたちを診るのは、大きなねこのとらまる。
昼と夜で病院の役割が変わる設定に、ページを開く楽しさがあります。
全ページカラーの絵が入っているため、動物たちの表情や場面を確かめながら、64ページのお話をたどれます。
絵本より少し長い読み物に慣れてきた子へ、山の動物たちがやってくる夜の時間を味わえる本です。
夜になると、町の動物病院は山の動物たちの病院へ。
ねこのとらまると一緒に、少し長い物語の時間へ入れます。
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『リンゴちゃんのおしごと』|楽しい主人公からシリーズへ
『リンゴちゃんのおしごと』は、マイちゃんのおばあちゃんが作ったお人形・リンゴちゃんが、のらねこのビッグに出会う幼年童話です。
るすばんに飽きたリンゴちゃんは、へいの上をよろよろ歩き、仕事へ行くビッグについていきます。
おしゃべりで、動けて、何でも一番が好きなリンゴちゃん。
その自由なふるまいと、ビッグとのかけあいが、物語を先へ先へと運んでいきます。
リンゴちゃんの声や動きが気に入った子には、同じシリーズでまた会いたい相手ができます。
るすばんに飽きたリンゴちゃんが、のらねこのビッグの仕事についていく。
わがままなお人形の声に、また会いたくなる読み物です。
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学校生活・友だち・気持ちに寄り添う読み物
教室でのちいさな気まずさ、友だちの言葉、だれかと同じ秘密を持つ時間。
読み物の中にそんな場面があると、子どもは物語を遠い世界ではなく、自分の毎日と重ねて読めます。
ここで紹介するのは、少しページ数のある本も含まれます。
最初から一冊をお子さまひとりで読まなくてもOK。
親子で途中まで読む、何日かに分ける、気になった場面だけ話す。
学校や友だちの物語は、その子の気持ちに合わせて、ゆっくり開いていける本でもあります。
『ともだちってどんなもの? がっこうのてんこちゃん』|友だちの数より、自分の感じ方へ
『ともだちってどんなもの? がっこうのてんこちゃん』は、森の学校に通うてんこちゃんたちが、「ともだちって何だろう」と考える読み物です。
てんみちゃんは、ともだちが100ぴきいたらいいのにと悩んでいます。
けれど、空を見るのが好きなてんこちゃんは、100ぴきで空を見たらたいへんなことになると考えます。
友だちをたくさん作ることだけが答えではなく、自分が落ち着ける距離や、一緒にいたい時間にも目が向くお話です。
学校での関わりに少し疲れた子にも、「友だち」の形を急いで決めなくていい余白が残ります。
ともだちは多いほどいいのかな。
てんこちゃんの考えを追ううちに、自分に合う距離や関わり方へ目が向きます。
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『おばけのリーブル あの子はともだち?』|「ともだちかな」と迷う気持ちにふれる
『おばけのリーブル あの子はともだち?』は、ガサゴソ森にすむおばけのリーブルが、「たぶん友達がいない」と思っているところから始まる読み物です。
いつもうるさいカラスのカー吉、人間のおじいさん、おっちょこちょいなたぬきのゴロー。
苦手だと思っていた相手を少し好きになったり、近づく前の戸惑いに気づいたりしながら、リーブルは「ともだちってどんな人のこと?」と考えていきます。
学校そのものを描く本ではありませんが、友だちになりたい気持ちと、まだ近づききれない気持ちのあいだにある揺れが重なります。
「ともだち」と呼ぶ前の小さな変化に目を向けられる読み物です。
リーブルは、自分には「たぶん友達がいない」と思っています。
苦手な相手との距離が少し変わる、友だちになる前の物語。
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『ぼくらとモリボウのひみつの時間』|学校で見つけた秘密を分け合う
『ぼくらとモリボウのひみつの時間』は、ユウタ、ルイ、ハジメの3人が、学校でふしぎな生き物を見つける読み物です。
黄緑色のボールのような生き物に、3人は「モリボウ」と名前をつけ、こっそり育てることにします。
自分たちだけが知っている存在を、友だちと一緒に見守る時間。
学校という身近な場所から、少しだけ特別な物語が始まるところに引きこまれます。
同じ秘密を大事にするうちに、3人の関係も、モリボウを見る目も少しずつ変わっていく読み物です。
学校で見つけた黄緑色の生き物を、3人だけでこっそり育てる。
秘密を分け合う時間から、友だちとの距離が動きます。
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司書が答える|はじめての読み物で迷ったときのQ&A
読み物を手渡す時期は、子どもの様子を見ながら迷うことがたくさんあります。
ひとりで読ませたほうがいいのか、読み聞かせを続けていてよいのか、途中で止まった本をどう受け止めるのか。
どれも、読書を大切にしてきたからこそ出てくる迷いです。
最後に、はじめての読み物を選ぶときに残りやすい疑問を、ひとつずつ整理します。
【Q1】ひとりで読ませたほうがいいですか?
はじめての読み物は、最初からひとりで全部読む必要はありません。
大人が前半を読み、子どもが会話の部分だけ読む。絵を見ながら、次に何が起こるかを一緒に話す。
そんな読み方でも、子どもは読み物の世界にふれています。
ひとり読みへ進む時期だからこそ、読み聞かせを急に終わらせなくて大丈夫です。
まずは、子どもが「このお話、続きを知りたい」と思えること。
そこから、自分で読むページが少しずつ増えていきます。
【Q2】読み聞かせを続けていても大丈夫ですか?
大丈夫です。読み物を手に取るようになっても、読み聞かせの時間を急に閉じなくてかまいません。
少し長いお話に出会う時期は、大人の声があることで物語の流れを受け取りやすくなる子もいます。
子どもは、聞きながら場面を思い浮かべたり、絵を見て続きを待ったり──全部を自分で読んでいなくても、お話を受け取る力は動いています。
今日は大人が読む。明日は子どもが一文だけ読む。
そんな行き来があっても大丈夫。
読み聞かせで作ってきた親子のリズムは、ひとり読みへ向かう途中にも残しておけます。
【Q3】途中で読まなくなった本は、やめてもいいですか?
途中で閉じた本があっても、それは失敗ではありません。
読み物へ移る時期の子は、題名や表紙にひかれて手に取っても、途中で文字の量やお話の長さに気持ちが止まることがあります。
いったん本棚に戻して、別の短い本を読む。
少し時間を置いてから、気になっていた場面だけ開く。
そんな戻り方でもかまいません。
一話ごとに区切れる本や、章の終わりがはっきりした本なら、前に読んだところを思い出しながら再開できます。
大切なのは、「最後まで読めなかった本」として終わらせないこと。
今は合わなかった本も、読む力や気持ちが育ったあとに、もう一度出会えることがあります。
【Q4】年齢よりやさしい本を選んでもいいですか?
選んで大丈夫です。
はじめての読み物では、年齢に合っているかよりも、子どもが最後まで読める分量かどうかを見ておきたいところです。
年齢目安より少しやさしい本でも、「読めた」と感じられる一冊なら、その子の読書の時間になります。
文字を追うことに力を使いすぎず、お話の始まりから終わりまで受け取れること。
そこに、読み物へ進む土台があります。
少し軽い本を選ぶことは、戻ることではありません。
自分でページをめくり、最後までたどり着く経験を積むための選び方です。
まとめ|「読めた」の経験を、次の一冊へつなげる
はじめての読み物選びでは、少し背伸びした本よりも、ページを閉じたあとの子どもの表情を大切にしたいところです。
最後まで読めた。
好きな場面があった。
また同じ子のお話を読みたい。
そんな小さな手ごたえが、次の一冊へ向かうきっかけになります。
本の厚さや対象年齢だけでは、子どもに合うかどうかは決まりません。
絵の量、章の区切り、登場人物への親しみ、親子で途中まで読める余白。
見る場所を少し変えると、その子に合う読み物の輪郭が見えてきます。
短い本でも、途中まで親子で読んだ本でも、子どもの中に残るものがあります。
焦らず、比べず、その子が「もう一冊」と思えるペースで、読み物の世界を手渡していきましょう。
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