図書館では、季節を問わず「平和の本を探しています」という問い合わせを受けることがあります。
ひと口に平和の本といっても、日常の安心から入る絵本、戦争や原爆、家族との別れを扱う絵本など、入口はさまざま。
この記事では、児童書専門の司書として、読み聞かせで選びたい平和絵本を、年齢や受け止め方に合わせて紹介します。
家庭で無理なく手に取れる一冊を見つけるために参考にしてみてください。
年齢別に選ぶ平和絵本|読み聞かせ前の考え方と早見
平和の絵本を選ぶときは、対象年齢だけで判断しきれないことがあります。
同じ年齢でも、こわさを強く感じる子もいれば、物語として静かに受け止める子もいます。
まず大人がページを開き、自分や子どもに合う温度かを確かめておく。
家庭で読む前の、ひとつの準備です。
この章では、読み聞かせの前に見ておきたい点を整理し、年齢や受け止め方に合わせて選びたい平和絵本を早見で確認します。
平和の絵本を読み聞かせる前に、押さえておきたいこと
読み聞かせの前に見ておきたいのは、年齢、内容の重さ、読んだあとの受け止め方。
家庭で平和の絵本を読む前に、まず押さえておきたいポイントを整理します。
・幼児〜低学年は、日常の場面から
遊び、食事、家族と過ごす時間など、身近な暮らしから平和にふれる絵本が入口に。
・小学生は、暮らしの変化に目を向ける
家族や町、学校での時間が、戦争によってどう変わるのか。場面ごとに見ていく本が候補になります。
・原爆、空襲、死別を扱う本は、大人が先に読んでおく
内容によっては、読む日や読む範囲を考えておきたい本も。
家庭で開く前に、大人が一度ページを見ておくと落ち着いて扱えます。
・読んだ直後は、感想を急がない
すぐに「どう思った?」と聞くより、表情やつぶやきを見る時間を置くと、お子さまの受け止め方が見えてきます。
・言葉が出ないときは、質問を重ねない
何も言わない時間も、読めていないわけではありません。
ふだんの会話や遊びへ戻り、あとから出てくる言葉を待つ形でも大丈夫です。
平和の絵本を読むとき、すぐに正解のある感想へ結びつけなくても大丈夫です。
その場で答えを引き出そうとせず、あとから出てくる言葉を待つ。
家庭で読むときは、それくらいの余白を残しておくと落ち着いて向き合えます。
年齢別に選ぶ平和絵本の早見
はじめに見ておきたい3冊を、年齢と受け止め方の目安で並べました。
気になる本は、本文で内容の重さや読み方を確認できます。
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幼児〜低学年に読みたい、平和を身近に感じる絵本
幼いお子さまにとって、「平和」はまだ大きな言葉です。
ごはんを食べる、友だちと遊ぶ、家族と眠る、安心して朝を迎える。
そんな毎日の場面が描かれていると、平和を遠い言葉ではなく、自分の暮らしの近くにあるものとして受け取れます。
ここでは、日常の安心や身近な景色から、平和について親子で話し始められる絵本を紹介します。
『へいわってすてきだね』|子どもの言葉から平和を見つめる
『へいわってすてきだね』は、6歳の子どもが書いた詩に、長谷川義史さんが絵を添えた絵本です。
ねこが笑うこと。おなかがいっぱいになること。やぎがのんびり歩き、与那国馬の声が聞こえること。
ページに並ぶのは、大きな説明ではなく、子どもの目に映る暮らしの場面です。
平和という言葉を先に教えるのではなく、「この時間が続いてほしい」と感じるところから入っていけます。
幼児への読み聞かせから、小学校低学年の平和学習の入口まで、日々の暮らしに重ねて開ける絵本です。
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おなかがいっぱい、動物の声が聞こえる。
そんな毎日の場面から、平和を自分の暮らしに重ねて考えられます。
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『へいわとせんそう』|見比べながら違いに気づく
『へいわとせんそう』は、平和なときと戦争のときで、人やもの、場所の見え方がどう変わるのかを見比べる絵本です。
「へいわのボク」と「せんそうのボク」。同じ人のはずなのに、ページを行き来すると、表情やまわりの空気が違って見えてきます。
短い言葉とシンプルな絵だからこそ、子ども自身の気づきが入り込む余白があります。
大人が説明を急がなくても、「ここが違うね」と親子で同じページを見ながら話を始められる構成。
「平和」と「戦争」を言葉だけで説明しにくいときに、まず絵から考える入口になります。
同じ人、同じ場所を見比べるうちに、平和と戦争の違いが静かに浮かび上がります。
説明より先に、絵から考えたい親子へ。
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『とうだいの光』|灯台に残る光から平和を考える
『とうだいの光』は、青森県・下北半島の灯台に残る記録から生まれた絵本です。
戦争中、海の安全を守ってきた灯台も空襲を受け、光を失いました。
けれど、壊れたあとに怪火が現れたという記録が残されています。
海を進む人の目印であり続けようとする灯台の姿。
戦争を大きな出来事としてだけでなく、今も残る場所やものから見つめられるところが印象的です。
海、光、灯台をたどりながら、過去の記憶と平和への願いに静かに触れられます。
空襲で壊れた灯台に残る、ふしぎな光の記録。
海を照らす目印から、平和を願う気持ちへ静かに目が向きます。
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📘 平和を、いのちや日常の大切さから考えたいときは、いのちについて考える絵本も参考になります。
小学校低〜中学年に読みたい、戦争と平和を考える絵本
小学生になると絵本の中で起きていることを、自分の暮らしと少し離して見られる場面が増えてきます。
家族と離れて暮らすこと。
町の景色が変わること。
敵と味方に分けられた人たちにも、それぞれの生活や名前があること。
戦争を大きな言葉で説明する前に、ひとつの家族、ひとつの島、ひとりの人の時間からたどる入口があります。
ここでは、戦争によって暮らしや人の関係が変わっていくことを、物語や実話を通して考えられる絵本を取り上げます。
低学年では大人がそばで読み、中学年のお子さまには、読んだあとに出てきた言葉を一緒に受け止めたい4冊です。
『戦争をやめた人たち −1914年のクリスマス休戦−』|敵と味方のあいだに生まれた時間
『戦争をやめた人たち −1914年のクリスマス休戦−』は、第一次世界大戦中に本当に起きた「クリスマス休戦」を描いた絵本です。
1914年12月24日の夜、向かい合う最前線にクリスマスキャロルの歌声が流れます。
銃声ではなく歌が聞こえ、敵と味方に分かれていた兵士たちが、少しずつ同じ場所へ歩み寄っていく時間。
戦場の中にも、一人ひとりの声や表情があり、兵士たちが記号ではなく人として見えてきます。
「敵」と呼ばれる人にも、歌を聞く心や、帰りたい場所があることに気づかされる作品。
クリスマスキャロルの歌声から、敵と味方の境目が少しほどけていく実話。
戦争の中に残った人の声を見つめます。
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『うさぎのしま』|白いうさぎへの問いから島の記憶へ
『うさぎのしま』は、たくさんのうさぎが暮らす広島県・大久野島を舞台にした絵本です。
一組の親子が白いうさぎを見つけ、「あの子のおかあさんも、白い?」と声にします。
その何気ない問いに合わせて、島の景色は第二次世界大戦中へさかのぼっていきます。
かつて大久野島では毒ガスが製造され、白いうさぎが実験動物として使われていました。
かわいいうさぎの姿から、島に残る戦争の記憶と、今も続く環境の問題へ目が向く絵本です。
白いうさぎへの小さな問いから、島の景色が戦争中の記憶へ変わっていきます。
かわいさの奥にある歴史を見つめる絵本。
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『字のないはがき』|小さな妹の丸とばつから家族を見つめる
『字のないはがき』は、戦争中に学童疎開をした小さな妹と、妹を送り出した父と家族を描いた絵本です。
まだ字が書けない妹は、父に渡されたはがきに、元気なら大きな丸を書くことになっていました。
届いた丸は少しずつ小さくなり、やがて、はがきには大きなばつが書かれるように。
丸が小さくなり、最後にばつが届くまでの変化から、疎開先で体調を崩していく妹の様子や心細さが重なります。
戦争によって家族が離れざるを得なかったことを、はがき一枚の重さから見つめる絵本です。
大きな丸が小さくなり、最後にばつが届く。
文字のないはがきから、戦争中に離れて暮らす家族の不安が伝わります。
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『星をおとした少女』|星をおとす少女の問いから戦争を見つめる
『星をおとした少女』は、丘の上のアパートに暮らすハナとカイが、毎晩星をながめる場面から始まる絵本です。
ふたりにとって夜空は、星の川を渡り、巨大なさそりに立ち向かう冒険の場所でした。
けれど、ある月のない夜に戦争が始まり、大好きな町も、カイとの時間も壊されていきます。
「どうして?」というハナの問いは、空へ駆け上がり、つぎつぎと星をおとしてしまう行動へ変わります。
星空に向かって星をおとすハナの姿から、戦争への怒りや悲しみが、子どもの中でどうあふれてしまうのかが伝わります。
星空を冒険の場所にしていた少女が、戦争で友だちと町を奪われる物語。
美しさの奥に、子どものまっすぐな問いが残ります。
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小学校中〜高学年に読みたい、戦争を深く考える絵本
小学校中〜高学年になると、写真、証言、詩の言葉を通して、戦争を少し深く受け止める本にも向き合えるようになります。
一冊を最初から最後まで読み通すだけでなく、気になる写真で立ち止まる。
詩の一節を声に出す。
残された言葉から、当時の子どもたちの暮らしを考える。
ここでは、原爆や戦争の記憶を、写真・証言・詩・翻訳絵本など、異なる形で見つめる本を取り上げます。
『朗読詩 ひろしまの子』|声に出して、失われた子どもたちに耳をすます
『朗読詩 ひろしまの子』は、四國五郎さんの朗読詩に、長谷川義史さんが絵を添えた本です。
物語を順に追う絵本とは違い、短い詩の言葉を声に出し、耳で受け取るところに重心があります。
呼びかけるような言葉の先にいるのは、原爆によって命を奪われた広島の子どもたち。
一文ごとに立ち止まると、説明では届きにくい痛みや問いが、声の間から浮かびます。
家庭で読むときは、すべてを急いで読み切らず、詩の言葉を少しずつ受け止めたい本です。
声に出すことで、原爆で失われた子どもたちの存在が近づいてきます。
急がず、一文ずつ受け止めたい朗読詩。
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『ヒロシマ 消えたかぞく』|家族写真に残る日常と原爆の喪失
『ヒロシマ 消えたかぞく』は、原爆によって失われた鈴木六郎さん一家を、残された写真からたどる写真絵本です。
笑っている顔、並んで写る家族、暮らしの中の一場面。
写真にあるのは、特別な出来事ではなく、家族が一緒に過ごしていた日々です。
その日常があったからこそ、原爆が奪ったものの大きさが、言葉より先に迫ってきます。
ささやかな、でも幸せそうな家族の写真を追ううちに、広島で失われた暮らしの重さが残ります。
笑顔の家族写真に残る、食卓や遊びや記念日の時間。
原爆が奪った日常の重さが、写真の前で静かに迫ります。
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『いま、日本は戦争をしている ―太平洋戦争のときの子どもたち―』|子どもだった人たちの語りから戦争をたどる
『いま、日本は戦争をしている ―太平洋戦争のときの子どもたち―』は、太平洋戦争中に子ども時代を過ごした人たちへの取材をもとにした、128ページの大型絵本です。
空襲、原爆、地上戦、引き揚げ、疎開など、各地で起きた出来事が、子どもだった人の語りとして並びます。
1エピソードが1見開きで構成されているため、最初から読み通すだけでなく、気になる地域や体験から開けるつくり。
戦争の説明を先に読むのではなく、「そのとき子どもは何を見て、どこで過ごしていたのか」へ目が向きます。
高学年のお子さまと少しずつページを選びながら、戦争を子どもたちの記憶の重なりとして受け取る本です。
空襲、原爆、疎開、引き揚げ。子どもだった17人の語りから、戦争中の日々が一つずつ立ち上がります。
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『戦争は、』|詩のような言葉と絵で、戦争の姿をとらえる
『戦争は、』は、特定の戦争体験を物語として追うのではなく、戦争そのものを詩のような言葉と絵で描く翻訳絵本です。
ページには、「戦争は、」で始まる短い文章と、黒を基調にした強い絵が交互に現れます。
人や町、暮らしをこわしていく戦争が、説明ではなく、ひとつの化けもののように立ち上がる構成。
日本の戦争体験を扱う本と並べると、場所や時代を越えて、戦争が何を奪うのかへ視線が広がります。
絵と言葉の一つひとつが重く残るため、高学年後半から中学生にかけて、大人も一緒にページを止めながら読みたい本です。
「戦争は、」で始まる短い言葉と黒い絵が、戦争を化けもののように浮かび上がらせます。
中学生にも手渡したい一冊。
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平和の絵本を読むときの迷いに答える|家庭の読み聞かせQ&A
平和の絵本は、読む前も読んだあとも、大人に迷いが生じるかもしれません。
幼い子どもに、戦争を扱う絵本を開いてよいのか。
怖がったとき、続きを読んでもよいのか。
感想を聞いたほうがいいのか。
ここでは、家庭の読み聞かせで出てきやすい迷いを、Q&A形式で整理します。
【Q1】感想を聞いたほうがいいですか?
読み終えたあと、すぐに感想が出てこないこともあります。
「どう思った?」と聞きたくなる場面でも、平和や戦争を扱う絵本では、お子さまの中で言葉になるまでに時間がかかることがあります。
まずは、表情やつぶやきを見るところから。
「ここ、気になった?」
「もう一回見たいページはある?」
感想をまとめさせるより、ページに戻れる声かけのほうが、家庭では落ち着いて話を始められます。
何も言わない時間も、読めていないわけではありません。
その日のうちに言葉にならなくても、あとからふと思い出すことがあります。
【Q2】子どもが怖がったときは、どう受け止めればいいですか?
怖がったときは、「こわくないよ」と打ち消さなくても大丈夫です。
平和や戦争を扱う絵本では、絵や言葉の一部が強く残ることがあります。
続きを読もうとするより、まずは本を閉じる。
少し離れる。
いつもの遊びや会話に戻る。
それで十分な場面もあります。
「こわかったね」
「ここでやめておこうか」
短い言葉で受け止めると、お子さまも気持ちを戻す場所を見つけられます。
読み聞かせは、最後まで読むことだけが目的ではありません。
その日のお子さまの様子に合わせて、途中で止める判断も大切にしたいところです。
【Q3】幼児に戦争を扱う絵本を読むのは早いですか?
幼児には、戦争の説明から入らなくても大丈夫です。
「平和」という言葉そのものを理解する前に、ごはんを食べる、遊ぶ、眠る、家族と過ごすといった毎日の場面から感じられることがあります。
小さなお子さまには、日常の安心が描かれた絵本から。
戦争や原爆、家族との別れを扱う本は、もう少し大きくなってからでも遅くありません。
家庭で読むなら、大人が先にページを開き、今のお子さまに合う内容かを見ておくと落ち着いて選べます。
幼児期は、毎日の暮らしの中にある安心を親子でたしかめるところから始めてみてくださいね。
【Q4】重いテーマの本は、どう読めばいいですか?
原爆、空襲、死別などを扱う絵本は、最初から最後まで一気に読み通さなくても構いません。
まずは大人が先に全体を読み、どの場面でお子さまの表情が変わりそうかを見ておきます。
家庭で読むときは、ページを飛ばすのではなく、区切りのよいところで止める読み方がよいでしょう。
「今日はここまでにしようか」
「次はこのページから読もうね」
途中で閉じたら、次に読むときは前の場面を少し見返してから続きへ。
お子さまの様子を見ながら、読む日を分けて進めるほうが合う本もあります。
📘 人との違いや立場の違いを、家庭でゆっくり話したいときは、多様性を家で話せる絵本も参考になります。
まとめ|平和の絵本は、親子で読める温度を確かめながら
平和の絵本を選ぶとき、年齢の目安はひとつの手がかりになります。
ただ、同じ学年でも、絵の印象に立ち止まる子、家族の場面に心を寄せる子、しばらく言葉にしない子がいます。
家庭で読むなら、まず大人が一度ページを開いておくこと。
声のかけ方、読む日の選び方、途中で止める場面まで、少し見通しを持てます。
読み終えた瞬間に、答えを出す必要はありません。
お子さまの表情や、そのあとに出てくる小さな言葉を受け止めながら、親子で読める一冊を選んでいく。
その積み重ねが、平和について家庭で考える時間になっていきます。
